L字形フォームに光が差す。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)が21日、阪神の沖縄・宜野座キャンプを視察し、昨季までともに汗を流した藤浪晋太郎投手(27)の変化に太鼓判を押した。ブルペン投球をチェックした後、大阪桐蔭の後輩を直撃取材。軸足に体重をしっかり乗せてからパワーを放出する形に、復活の兆しを感じ取った。【聞き手=佐井陽介】

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藤浪投手のブルペン投球を報道陣席でチェックした時、踏み込む足の歩幅が少し狭まっているように感じました。練習後、本人にじか当たりしてみたところ、興味深い結論に達しました。

以前であれば左足を踏み込んだ際、上半身がやや突っ込みがちに映っていました。それが今は左足を踏み込んだ際、右足からお尻にかけてしっかり体重をため込めています。上半身を捕手方面から遠ざけたまま右手をトップの位置に持ってこられているから、歩幅が狭く見えただけだったのです。

三塁側から見れば、右足から右脇腹にかけた右半身のラインを縦にして、地面部分を横にした「L字形」。このフォームと充実感たっぷりの表情に、復活の兆しを感じ取りました。

藤浪投手は1月、自主トレを共にした巨人菅野投手から軸足となる右足についてアドバイスを受けています。これまでは左足を上げた時に右膝が折れてはいけないと考えていたけれど、菅野投手から「折れてもいい」と教わったそうです。右膝を少し曲げる形にしてみたところ、今まで以上に体重を軸足に乗せられるようになり、右のお尻部分に1度ため込んでからパワーを放出できるようになったのだと思います。

上半身が突っ込んだ状態で左足が着地すると「1、2、3」のテンポでボールが離れてしまいます。もちろん、打者はタイミングを取りやすくなります。その逆で、軸足にパワーを残したまま左足を着地させてから体重移動すれば、「1、2~の3」といった具合にいわゆる「間」を作れるようになります。こうなると打者はタイミングを取りづらくなります。体が投手側に出されて、ボールをより速く感じるはずです。

分かりやすい例を挙げれば、阪神の左腕、岩崎投手です。岩崎投手は右足を着地した後の「間」があるから、140キロ前半の直球でも空振りを取れますよね。

それだけではありません。軸足にしっかり乗せてから体重移動できれば、打者は投手が迫ってくるように感じます。ただでさえ160キロを投げられる投手にさらなる迫力が加われば、抑え込める確率は当然上がります。その上、右半身に力をためてから投げられれば、腕を振り下ろす空間が大きくなって、ボールをたたきやすくもなります。

現状、体の使い方はだいぶ良くなっているように感じました。復活へ、順調に調整を進められているのではないでしょうか。(日刊スポーツ評論家)

ブルペンで投球練習を行う藤浪(撮影・前岡正明)
ブルペンで投球練習を行う藤浪(撮影・前岡正明)
ブルペンを視察する本紙評論家の岩田稔氏(撮影・前岡正明)
ブルペンを視察する本紙評論家の岩田稔氏(撮影・前岡正明)