オープン戦が始まる時期になり、新人選手の生き残りはここからが本番になる。ルーキー捕手に大いに期待している。ロッテのドラフト1位松川虎生(18=市和歌山)と、楽天ドラフト2位安田悠馬(21=愛知大)。この2人がどこまで開幕1軍に肉薄できるか、非常に楽しみだ。

とりわけ松川が挑む高卒ルーキー捕手の開幕1軍は極めて難しい。私が思い返した範囲では大洋時代の谷繁、西武炭谷くらいか。捕手という特殊ポジションをルーキーが、それも高卒となれば、快挙と言ってもいいくらいだ。

高校とプロのレベルの違いは相当なものだ。安田が経験した大学野球とプロも大きな開きがあるが、松川が感じるレベル差は安田の数倍だろう。投手のレベルも、打者のレベルも格段に違う。その中でここまでは、捕手として落ち着いた振る舞い。大健闘と感じる。

佐々木朗とバッテリーを組んだ試合では163キロの球速が注目されたが、松川のキャッチングも良かった。正確に言えば、悪くないという方が近いかもしれない。低めのまっすぐ、フォークをしっかり止めていた。球審が見えづらいキャッチングはなく、基本ではあるが、ローテーションクラスのボールを受ける基盤はあるということだ。

ここからは、試練の連続だろう。味方の投手は開幕を目指し調子を上げていく。実戦感覚を取り戻すべく、徐々に公式戦モードのピッチングに移行。そうなると、松川は戸惑うことが多くなるだろう。まだ投手の特徴もしっかり頭に入っていない。打者もどこが強いのか手探りだろう。それこそ、テレビで見てきた打者と勝負する。自分を見失わない方が不思議なくらいだ。

私も経験があるが、1軍レベルの投手と打者の対戦に、考えがまとまらず指が出なくなる。サインを出すため、指をパッパと動かすのだが、それが緊張の余り、イップスのように動かなくなる。私はプロ入り後しばらくして1軍を肌で感じたが、松川はまだ高校生だ。そこを考慮すると、オープン戦に帯同し、出場するだけでも、大したものだ。

首脳陣はどこかで、重圧を解いてやる言葉がけが必要と感じるが、そこから先は松川自身の心身のタフさ次第となる。意義あるチャレンジをしっかり見届けたい。(日刊スポーツ評論家)

ブルペン捕球するロッテ捕手の松川。手前は田村氏(撮影・江口和貴)
ブルペン捕球するロッテ捕手の松川。手前は田村氏(撮影・江口和貴)
20日のヤクルト戦で右前打を放つロッテ松川
20日のヤクルト戦で右前打を放つロッテ松川