17イニング、打者52人連続アウトと、世界記録を更新中のロッテ佐々木朗希投手(20)は次回、24日のオリックス戦(京セラドーム大阪)に先発予定だ。10日に13者連続奪三振での完全試合を達成したオリックス打線に2週間後、再び投げ込む。大記録はどこまで伸びるのか-。逆に止めるのは誰なのか-。

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なぜ佐々木朗を打てないのか-。すごいという言葉を超えた投手だ。だがプロの打者が17イニングも連続で無安打に抑えられれば、その点も関心が出てくる。

この2試合を見ると、打者は基本的に直球を狙っている。中には200%直球待ちという状況もある。それでも当たり前のように打ち損じ、ファウルになる。

なぜ狙った直球を捉えられないのか。空振りを見ていると、明らかにボールの下を振ったスイングが多い。初速と終速の差がなく、回転数が高いのだろう。スロー映像を見返したが、球が回転している時の縫い目が見えなかった。スローならば多少は見えるもの。見えないほどの高い回転数で、ベース板を通過するときに打者にホップしていると感じさせる。

さらに190センチの長身を生かして、たたきつけるように腕を振り抜く。昔でいえば江川卓さんは押し出すように振り、ダルビッシュは佐々木朗との中間ぐらいの感じ。だが佐々木朗ほどの角度からたたきつけるタイプは少ない。高めに浮き上がるより、低めに伸びて、最後にホップする。打者は見慣れないだろう。

フォークもやっかいだ。直球と同じ腕の振りで、よほどマークしていないと「直球が来た」と振ってしまう。ベース手前でワンバウンドするような、明らかなボール球もない。ストライクゾーン低めや、そこからボールになる軌道で収まる。フォークと分かって見逃してもストライクになり、打ちに行ったら低めのボール球で届かない。佐々木主浩さんほどの落差はないが、スピード、コントロール、落差とすべてが絶妙な調和をとれている。

なら、どう打つか。もちろん簡単ではないが、まずはヒットを打つことから考える。今は直球狙いの打者が多いが、逆転の発想でフォークを狙う手はある。直球のタイミングで待ちつつ、実際はフォークを狙う。いい打者は始動が早い。打つ体勢を早くつくり、直球のタイミングで合わせつつ変化球を拾うことができる。

好打者は2ストライクに追い込まれてから、そういう打撃をするケースが多い。これを佐々木朗に対し、カウント0-0からやる。常に2ストライクに追い込まれている意識で、直球のタイミングで始動し、実際はフォークを待つ。

次に考えるのは揺さぶりだ。日本ハム新庄監督は17日の対戦前に「全員セーフティー(バント)をさせます」と話していたが「ああいうピッチングを見た時に、正々堂々と」と正攻法で挑んだ。正々堂々というのも野球。一方でいやらしいことをするのも野球だ。

この2試合、佐々木朗のペースで投げさせてしまっている。まずはヒットを打ちに行くが、無理ならセーフティーバントで揺さぶって相手のペースを崩す。ヒットが無理でも四球や野手のミスにつなげて走者を出す。走者を置けば、セットになり、リズムが崩れるかもしれない。

チーム戦術も変えなければいけない。10日のオリックス戦。初回無死二、三塁、1死二、三塁とオリックスは通常の守備態勢だった。序盤で内野ゴロによる1失点を許容するのはセオリー。だが佐々木朗には当てはまらない。1点勝負になる可能性がかなり高い。初回からサヨナラのピンチというつもりで失点を防ぎにいかなければいけない。

普通のことをしていては勝てない。振り切ったことをする。それほどの投手だ。(日刊スポーツ評論家)

10日オリックス戦で完全試合を達成し雄たけびを上げるロッテ佐々木朗希
10日オリックス戦で完全試合を達成し雄たけびを上げるロッテ佐々木朗希