序盤で試合は決まってしまった。1点を防ぎにいきながら大量失点してしまう典型的な悪いパターンに、巨人高橋優貴投手(25)ははまった。

2四球と犠打で1死二、三塁とした2回。投手としてはバッティングがいい阪神先発の伊藤将を打席に迎えた。カウント1-2と追い込んでからスライダー、ストレートを交互に4球。コースは全て外角で、結果は四球で満塁となった。伊藤将はファウルもしっかりスイングしてきた。高橋の心境を想像するなら「投手に打たれたらどうしよう」「打たれるかもしれない」、そんなところだったのではないか。

伊藤将のバッティングを恐れるあまり、外角一辺倒のピッチングになったのだが、どうして内角を1球も使わなかったのか。満塁で対した続く近本には、カウント1-2から内角を狙った真っすぐが甘く入り、先制タイムリーを許した。しかし、少なくとも内角を攻める意識は感じられた。

まったく同じカウントで、少なくとも近本には内角を攻めようとしながら、伊藤将に対してはなかった。ここに試合を分けるポイントがあったと強く感じる。どうして内角に投げないのか。パ出身の私としては、対投手という場面がなかったので推測しかできない。その中で考え得るのは、投手に死球を与えたくないという心理くらいか。

まだ試合は序盤。始まったばかりの2回で2四球後に、投手に四球では、試合は壊れる。野手並みに警戒するならば、内角を攻め、最大限に慎重に投げるべき場面だった。その後、大山のレフト前ヒットを左翼ウォーカーが捕球し損ね、2者の生還を許した。1点を防ぎにいくはずが、この回4失点。伊藤将の快投もあり事実上、試合は決した。

巨人としては負け方が良くない敗戦となったが、1つだけポジティブな要素がある。ここから交流戦が始まる。パ主催試合はDH制で、左翼の守備をもっと固めることは可能になる。

高橋は自滅でチャンスをつぶしたが、この反省を忘れないでほしい。同じ場面に直面した時、この日の伊藤将への四球を忘れず、野手と同じように内角を使うピッチングを期待したい。(日刊スポーツ評論家)

阪神対巨人 2回裏阪神1死満塁、近本に中前先制適時打を浴びる高橋(撮影・上田博志)
阪神対巨人 2回裏阪神1死満塁、近本に中前先制適時打を浴びる高橋(撮影・上田博志)
阪神伊藤将の配球図
阪神伊藤将の配球図
巨人対阪神 2回途中で降板する巨人先発の高橋(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 2回途中で降板する巨人先発の高橋(撮影・たえ見朱実)