阪神が今季16度目の完封負けを喫し、4連勝と3位浮上を逃した。打線は広島アンダーソンに8回無失点の好投を許し、プロ野球記録にあと3試合まで迫っていた近本光司外野手(27)の連続試合安打も「30」でストップ。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)は試合のキーポイントに広島守備陣の大ファインプレーを挙げ、5回1失点と好投したドラフト3位桐敷拓馬投手(23)の課題にも触れた。【聞き手=佐井陽介】

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終わってみれば、2回裏に広島の中村健人選手が決めた大ファインプレーが、試合の行方を決定づけましたね。2回表に4番マクブルーム選手の左中間ソロで先制した直後、無死二塁で大山選手の右中間への大飛球を間一髪でキャッチ。ただでさえカープとの相性が悪いタイガース目線で言えば、相当にダメージの大きいワンプレーでした。

「たられば」にはなりますが、打球が抜けていれば、間違いなく試合は振り出しに戻っていました。さらに勝ち越しの好機を迎えていたはずが、二塁走者がタッチアップできたとはいえ1死三塁どまりとなったのですから、阪神ナインはさぞかしガックリきたことでしょう。野球は流れのスポーツ。中村選手のあのプレーにはとてつもない重みがあったように感じます。

阪神先発の桐敷投手は約3カ月ぶりの1軍マウンドでした。「谷間の先発」として5回1失点という結果は誰の目にも上出来です。ただ、今後は外国人選手に対する配球により変化をつけてもいいのかもしれません。もちろん本人も反省しているでしょうが、2回のマクブルーム選手への1球は少しもったいなかったように映りました。

僕自身、現役時代に何度となく痛い目に遭いました。外国人選手はインパクトの瞬間に両腕が伸びる、いわゆる「手伸びゾーン」がもっとも危険です。日本人選手なら押し込んでポップフライにできるボールも、時には簡単にスタンドまで持っていかれます。2回にマクブルーム選手を迎えた場面、いくら2ボールになったとはいえ、外寄りの高め直球はあまりに不用意すぎたかなと感じました。

この日の投球は力みも出る久々の1軍登板としては上々の内容でした。ただ、桐敷投手はこれから虎左腕勢の中核を担っていく投手。さらなる高みを目指す上で、外国人選手限定の配球も、早いうちに身につけておいてほしいなと思います。(日刊スポーツ評論家)

阪神対広島 2回裏阪神無死二塁、中村健は大山の右飛を好捕する(撮影・上田博志)
阪神対広島 2回裏阪神無死二塁、中村健は大山の右飛を好捕する(撮影・上田博志)
阪神対広島 2回表広島無死、桐敷はマクブルームに左中間へ先制本塁打を浴びる(撮影・前岡正明)
阪神対広島 2回表広島無死、桐敷はマクブルームに左中間へ先制本塁打を浴びる(撮影・前岡正明)