奇跡の逆転優勝を狙うためにも、負けられない試合が続くDeNA。追い上げなければいけない立場で何よりも必要なものは「勢い」だろう。序盤に3点をリードされる劣勢な試合展開を、アグレッシブな野球ではね返した。

3点を追う5回裏、6番のソトと7番の柴田が連続ヒット。ここで三浦監督は捕手の戸柱に代えて、代打オースティンを送った。

「3点、負けているんだから当たり前だろう」と考えがちだが、プレッシャーのかかる試合だと、勝負手が遅くなるケースがある。オースティンといえば代打の切り札。試合は中盤だし、もう少し追い上げてから、ワンヒットで同点、もしくは勝ち越しという場面で使いたくなる。もっと消極的な思考でいえば、併殺の可能性がない状態で起用したくなる。

戸柱に送りバントをさせて、9番の浜口に代打を送る手もあった。その場合、オースティンを代打に送れば歩かされる可能性はある。勝負するにしても、真っ向勝負にはならないだろう。

この代打策は1点を取りに行くというより、一気に同点、もしくは逆転を狙った攻撃的な采配だった。

結果、オースティンは三振したが、攻撃的な姿勢は選手にも伝わるもの。続く代打嶺井が追い込まれながらレフト前ヒット。桑原も初球をセンター前に2点タイムリー。1死一、三塁でセーフティースクイズ。一気に同点に追い付いてみせた。

こうなれば「勢い」がつく。6回にはソトが勝ち越し2ラン。8回にも宮崎がダメ押し2ラン。試合は決まった。

三浦監督といえば、あまり動かないタイプだと思っていた。監督2年目を迎え、攻撃面で積極性が加わった。今試合では前日に30球を投げたストッパー山崎をベンチから外し、入江を2イニング投げさせた。選手の疲労を考慮しながらも、攻撃的な采配と言えるだろう。

残り試合が一番多いDeNA。過密日程になるだろうが、攻撃的なラストスパートが決まれば、ヤクルトにひと泡吹かせる可能性はある。最後までセ・リーグを盛り上げる試合を期待している。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対巨人 試合後、ファンにあいさつするDeNA三浦監督(中央)(撮影・江口和貴)
DeNA対巨人 試合後、ファンにあいさつするDeNA三浦監督(中央)(撮影・江口和貴)