思わず、現役時代を思い出してしまうような展開だった。終盤の7回表、リードはわずかに1点。1死三塁のピンチを迎え、DeNAベンチが動いた。打者は左打者の近本だったが、マウンドへ向かったのは右腕の伊勢だった。

近本への初球は力勝負。真っすぐには滅法強い近本だが、伊勢の1番の武器も球威のある真っすぐ。このような場面、自分の武器がはっきりしている投手は迷いがなく、力を発揮できる。

やや高めに浮いたが、力で押し込んで三塁へのファウルフライ。続く4番の大山にも真っすぐを2球続けてセンターフライ。いい当たりはされたが、伊勢の気迫勝ちと言っていい。

ベンチの信頼を力に変えるタイプ。リリーフした状況を、もう一度振り返ってほしい。

先発した大貫はここまで満点のピッチング。大貫の続投でもよかったし、左のエスコバーの選択肢もあった。そして内野は前進守備。1点もやらないための伊勢のリリーフだった。その重圧をこれ以上ない投球で期待に応えた。

ここまででも見事なのだが、1番ビックリしたのは8回のマウンドに上がったこと。絶体絶命の場面からの登板で、このときにイニングをまたいでの登板は、伊勢には告げられていないと思う。心の準備もしていないし、やはりピンチを切り抜けた直後の達成感はその後の投球に悪影響を残してしまう。

しかし、原口、佐藤輝、代打のロハスを連続三振。阪神に傾いていた試合の流れを断ち切った。

DeNAといえば、強力打線のイメージがあるが、今季は思ったように機能しなかった。それでも2位になり、CSでも1勝1敗のタイに持ち込んだ。こうした投手戦をしのいで勝ち星を挙げられるのも、伊勢を筆頭にした強力なリリーバーがチームを支えているからだ。

短期決戦のポストシーズンは負けていい試合などない。すべての試合に勝ちにいくため、信頼のあるリリーフ陣は強力な武器になる。ただ、これは同じ強力中継ぎ陣を持つ阪神にもいえること。勝負を決める3戦目のリリーフ陣のハイレベルな投球も注目したい。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対阪神 7回途中でマウンドに上がったDeNA伊勢は、無失点に抑えグラブをたたく(撮影・たえ見朱実)
DeNA対阪神 7回途中でマウンドに上がったDeNA伊勢は、無失点に抑えグラブをたたく(撮影・たえ見朱実)
DeNA対阪神 7回表を無失点に抑え、伊勢(右から2人目)はナインをベンチ前で迎える。左は大貫(撮影・鈴木みどり)
DeNA対阪神 7回表を無失点に抑え、伊勢(右から2人目)はナインをベンチ前で迎える。左は大貫(撮影・鈴木みどり)
DeNA対阪神 阪神に勝利し、ファンの声援に応えるDeNA伊勢(撮影・鈴木みどり)
DeNA対阪神 阪神に勝利し、ファンの声援に応えるDeNA伊勢(撮影・鈴木みどり)
DeNA対阪神 力投するDeNA伊勢(撮影・たえ見朱実)
DeNA対阪神 力投するDeNA伊勢(撮影・たえ見朱実)
DeNA対阪神 降りしきる雨の中、ファンに手を振って場内1周をするDeNA伊勢(撮影・たえ見朱実)
DeNA対阪神 降りしきる雨の中、ファンに手を振って場内1周をするDeNA伊勢(撮影・たえ見朱実)