レギュラーシーズン2位の広島が延長11回サヨナラ勝ちでDeNAを下し、ファイナルステージ進出へ王手をかけた。

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最後は秋山のサヨナラ打で決まったが、チーム一丸となって戦う広島の強さの秘密が、凝縮した試合だった。開幕前の前評判はそれほどではなかった広島が、なぜ2位に躍進したのか? そんな問いに答えるようなCSファーストSの初戦だった。

DeNAの先発は、最多勝の東だった。今季の成績を見れば難攻不落の投手と断言できる左腕。広島戦の対戦成績も6試合に登板して4勝0敗で、防御率は1・84。どうやって戦うのか、注目していた。

1点をリードされた8回裏だった。先頭のデビッドソンが四球で出塁すると、代走に羽月を送った。投手の打席で代打・矢野が送りバント。ここまでは誰もが想像するようなセオリー通りの攻めだった。

本領発揮したのは、ここからだった。二塁走者の羽月が初球に三盗を決めると、3球目にスクイズ。結果だけを振り返っても「見事」ではあるが、なぜこんな作戦ができたのかを考えると、今季の広島の強さが見えてくる。

まず羽月の三盗だが、ちゅうちょなく初球に走っている。左投手は右投手より三盗しやすいが、今季の東は一度も三盗されていない。ここで走れるということは、このような状況でけん制をしてこないという事前の情報があったのだろう。それでも緊迫した場面であり、サインを出したベンチの勇気も、思い切ってスタートした羽月の度胸も見事だった。

そしてスクイズ。これだけの奇襲を成功させた後だけに、ついつい「後は任した」と考えがち。打席はベテランの菊池で、3回1死二、三塁のチャンスで空振り三振しているが「今度こそなんとかしてくる」という思いが出てきても不思議ではない。ここで奇襲を2度も続けられるのは、新井監督が「ベンチが責任をとる。選手は思い切ってやってくれ」という強い思いがあるからだろう。

今季の広島の盗塁数78は、リーグトップの阪神とわずか1つ差の2位。ただ走るというだけでなく、相手投手のけん制の癖を研究して走っていた。戦う前に「機動力を使って戦う」と話す監督は多いが、そもそも機動力は「奇襲」という側面が強く、ここ一番の大事な試合で前面に押し出して戦うことは難しい。選手にしても、大一番で思い切った走塁をするのは度胸と経験が必要になる。

3回無死一塁、フルカウントからエンドランをかけてファウルになった。走者は足が速くはない坂倉で、打者は空振りの可能性が高いデビッドソン。この状況で相手バッテリーに圧力をかけ、次球の投球でサインを解除。得点には結び付かなかったが、四球でチャンスを広げた。東は今季、9度走られ、6度盗塁を決められている。それほどクイックを得意にしている左腕ではなく、機動力で圧力をかけていく方針を最初から固めていたのだろう。ベンチ、選手、そしてスコアラーを含め、チーム一丸でつかんだ逆転勝利で先勝した。(日刊スポーツ評論家)

セCSファーストS第1戦 8回裏広島1死二塁、打者菊池涼介の時、羽月は三盗を決める(撮影・加藤孝規)
セCSファーストS第1戦 8回裏広島1死二塁、打者菊池涼介の時、羽月は三盗を決める(撮影・加藤孝規)
広島対DeNA 8回裏1死三塁、菊池は投前スクイズを決める。投手東(撮影・前岡正明)
広島対DeNA 8回裏1死三塁、菊池は投前スクイズを決める。投手東(撮影・前岡正明)