今年のキャンプ取材で、一番見たかったのがオリックスの2年目斎藤響介、そして育成の2年目才木海翔、同4年目川瀬堅斗の3投手だった。
昨夏から、この3投手の成長がオリックスの4連覇に大きく関わってくるだろうと、情報を集める中で感じていた。
この目で彼らのボールを見ることが、このキャンプ取材最大の焦点だった。彼らはこれからチャンスをつかむ立場にある。ブルペンでの投球を見て、置かれた立場をよく理解していると感じた。
まず才木は、真っすぐとフォークがいい。私は捕手の後ろで見させてもらったが、ちょうどトラックマンのデータを扱うスタッフがそばにいて「スピン量、回転数は1軍レベルだよ」と教えてくれた。私が見たボールのキレと、示されたデータは符合していた。
斎藤は何でもできる器用さを感じる。その隣で投げていた川瀬も真っすぐに力強さを感じる。あとは変化球をどれだけきっちり操れるかだろう。さらに、この日はピッチングは見ることはできなかったが3年目椋木蓮もいる。
そして、ブルペンでは同じ育成5年目、中田惟斗が動くボールを駆使しており、おもしろい存在に映った。山下舜平大のショートアームを取り入れ、右腕を大きく回さず、手首を腰から胸元へ引き上げる動作で、コンパクトなフォームを心がけていた。制球が安定する効果が期待できる。何を取り入れたらいいのか、研究熱心なところは好感が持てた。
昨年は主砲吉田が抜け、今年は大黒柱の山本由伸と、さらに左腕山崎福が移籍した。率直に言えば大きな戦力ダウンとなるのだが、そうは見えないのがオリックスの戦力の秘密と言える。
スタッフに貴重な話を聞く事ができた。「オリックスのキャンプは早く終わって、練習量少ないってよく言われるよ」と、いきなりこちらが感じていた核心を突かれた。そこから、主力が抜けると誰かが成長するチームの背景を説明してくれた。
確かに全体練習は淡々と進む。特に声を出しているわけでもない。一見すると軽めの印象を受けるのだが、説明を聞き、個人練習の質と量に絶対の自信を感じた。けがをしてから予防のウエートトレーニングをするのではなく、故障しないために強い体、大きな体をつくりあげている。
そのためには、個々の選手に応じたメニューや、育成スケジュールを課している。自主性に委ねるというよりも、本人の自覚、トレーニング法が確立されるまでは、チーム主導で豊富なメニューを与えている。その一例が、山下の目を見張るほどの堂々たる体格だ。
昨年、一気にエース格へと駆け上がった山下は、決して素材頼み、偶然の産物ではない。育つべくして育ったのだとよく理解できた。同じように、斎藤、才木、川瀬も目の前にあるチャンスをつかむべく、しっかり準備しているのがこの日のブルペンで伝わってきた。
22年シーズンは宇田川が、そして昨年は東が、いずれも育成から飛躍を遂げた。つまり、才木、川瀬、中田ら育成投手にとって、直近に成功例がある。今度は自分たちの番だと信じて疑わない目的意識をひしひしと感じる。
山本、山崎福をカバーするのは至難の業。しかし、克服すべきチーム事情のたびにそれを補う戦力が出てくるのがオリックスの強さの根源だろう。
投手スタッフを見て今年は苦しいなと感じるファンも多いだろうが、私は自分の目で見て感じた。4連覇への胎動は確かにある、そしてその扉を開くのは斎藤、才木、川瀬、中田、そして椋木の誰かだろう。
理想的な新陳代謝で戦力が好循環する。オリックスが秘める底知れぬたくましさを、清武キャンプで実感した。(日刊スポーツ評論家)




