ソフトバンクのキャンプ取材をして、偽らざる気持ちを言えば、これも時代の変化なのかと感じ、少し寂しくもあった。

9時過ぎからアップが始まり、スタンドで見ていた私は特に意識することもなくソフトバンクらしい空気感を期待していた。それは、小久保新監督の現役時代から受け継がれてきた、はつらつとした声にグラウンドは活気づき、見ているこちらもその声に圧倒される一種独特の雰囲気だった。

広島ならば猛練習、巨人は盟主らしくスタイリッシュで、いつの時代も六甲おろしが響く阪神など、チームの代名詞とも言える特徴が、ソフトバンクならばキャンプでの活力だった。

川崎が抜け、松田が抜け、ここ数年はその活力が年を追うごとに薄れてきた。そして今年はとうとう声でチームを引っ張る存在はいなくなってしまった。その存在は無理やりつくるものではなく、ふさわしい選手が引っ張ってこそ、絵にもなり、チームにフィットする。松田がいた一昨年までは、シートノックでは声が途切れることはほぼなく、ほんのわずかでも静かになれば、隣のサブグラウンドから2軍の大声が響いてきた。今は、球場に流れる曲ばかりがやけに耳に入ってくる。

声が出ていれば、ペナントレースで勝てるのか、優勝できるのかと言われてしまえば、それは違うだろう。それでも、ソフトバンクにしかない特色がないのは、その全盛時を知る者としては、何とも言えない気分になる。

第1クールの動きとして見れば、フリーバッティングで見せた柳田の力強さはやっぱり群を抜いていたし、近藤の鋭い打球も見事だった。守備では牧原大のシャープな動き、きっちり仕上げてきた肩を含め、完璧な調整でキャンプインしたとうならせてくれた。

個々の動きは、やはり優勝争いに堂々と食い込んでくるだけの実力を感じさせてくれる。それでいて、ソフトバンクならではの圧倒的な声によって、見ているこちらをのみ込んでしまう迫力がなくなったのは、厳然たる事実だった。

引退して10年。評論家として毎年この第1クールにソフトバンクに足を運んできた私には、それが一抹のさみしさと感じた。これも時代の変化なのか。

脈々と受け継いできたものはここで一区切りを迎えた感はある。ここからは、また新しいソフトバンクのチームカラーが生まれるのかもしれない。「ブルペン警察」を自認する私も、今日ばかりはこれまでの変遷への思いがよぎり、ずっとメイングラウンドを見詰めていた。(日刊スポーツ評論家)