日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(40)が古巣阪神の敗戦をチェック後、2つのポイントに着目した。2回で自己ワーストタイ6失点を喫した伊藤将司投手(27)、1軍公式戦で初めて甲子園の左翼を守った前川右京選手(20)の改善点とは-。【聞き手=佐井陽介】

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阪神先発の伊藤将投手はホームベース板での球の強さを感じませんでした。2回で8安打を浴び、6失点で早々に降板。不運な当たりもありましたが、それよりも球質が少し気がかりです。立ち上がりからボールが高かったのは事実。ただ、本来の伊藤将投手であれば、たとえ高くても球の強さでファウルを奪えるシーンも少なくありません。それがこの日は痛打される場面が目立ち、低めにズドンと決まる直球も少なかった印象です。

直球に強さがない時は変化球でも押し込めないケースが多いもの。変化球でかわしにいっても、なかなか思うようにはいきません。結局は自分で球質を取り戻すしかありません。僕の場合、球に強さを感じない時は力みを減らすため、あえて「腕を振りすぎない」ことに集中しました。腕だけで投げてしまわないように、上半身と下半身を連動させるイメージを持って、トレーニングで体幹やお尻周りに刺激を与えていました。もちろん、伊藤将投手にも多くの引き出しがあることでしょう。次回は通常の球の強さを取り戻してくれることを期待します。

もう1点、気になったのは前川選手の守備です。1軍公式戦では初の甲子園左翼守備だったそうですが、広島走者勢に迷うことなく次の塁を狙われていた点は心配です。0-5の2回2死二塁では正面への安打にチャージし、簡単にホームインを許しています。もう1点も与えたくなかった場面。今後は同じような場面でさらに前に守るなどポジショニングに工夫が必要だと感じました。他にもフェンスに到達していなかった左翼線二塁打で一塁走者にホームインされ、左前打で一塁走者に三塁進塁を許す場面もありました。非凡な打力を生かすためにも、地道に守備力を向上させてほしいものです。

一方、救援陣はさすがの働きぶりでした。6点を追う展開になっても攻めの投球を崩さず、試合を壊しませんでした。2番手・漆原投手の3回無失点がなければ森下選手の1発は生まれなかったでしょうし、浜地投手の真っすぐにも本来の強さが戻りつつあります。序盤に大差をつけられても食らいついた試合展開。そこまで悲観する負けではなかったと考えます。(日刊スポーツ評論家)