うだるように暑い。ましてやヤクルトの本拠地は屋外の神宮球場。滝のように汗がしたたる。一服の納涼を届けられるようにウソか本当か、ほんの少し背筋がヒヤッとする都市伝説をお届けします。

 ◆古い寮 現在は建て替えられて新しい戸田寮。昔はさまざまなこわーい話があったという。球団関係者は「和室がやばかったんだよ」と証言する。普段は使われない畳敷きの部屋には独特の空気が漂っていた。1月、入寮した新人に各部屋を紹介する際、霊感が強いという新人は「この部屋はヤバイ。何かいる」と話し、入ることを拒むほど。球団関係者が匿名を条件に話をくれた。「その部屋に日本人形があったんだけど、髪が伸びてた。俺は見たことがないんだけどね」。

 さらに続く。「後はエレベーターがね…。夜とか地下から上がるんだけど、必ず2階で止まって、ドアが開くんだよ。誰もいないのに。怖いから、扉が閉まるボタンを連打するよね…」。現在はピカピカの寮となり、不思議な現象はなくなったそうだ。

落合博満氏
落合博満氏

 ◆竜の先発隠し 心霊現象などよりも怖いのは人だったりする。広島分析担当の志田宗大スコアラー(38)はマツダスタジアムの天気の話をくれた。「左翼奥にある山が曇ると必ず雨が降る。だからどれだけ天気予報で雨は降らないと言っていても、雨具を用意する」と話す。なるほど、有意義な都市伝説だ。だがゾッとする体験はないか聞くと、目を伏せた。「恐ろしかったのは間違いなく落合監督の頃の中日だった…」。

 スコアラー1年目の11年、予告先発が導入される前の中日を担当した。だが、待っていたのはゾッとする光景だった。「先発投手全員が全く同じ調整をしている。本当に誰が投げるのか分からなかった」。目を皿のようにして見つめても、全員が同じ練習内容を行う。番町皿屋敷のように「1本、2本、3本…」とダッシュの本数を数えても、全員が全く同じ。距離も、強度も変わらなかった。

 一体誰が投げるのか。確信が持てない。失敗できないために「常に右投手、左投手を準備していた」。と準備。「単純計算で2倍の時間がかかるから大変だった。これは逆にいうとミーティングで2人説明しないといけないから、説明できる時間が半分になる」。その年、見事に中日はセ・リーグを制覇した。

 「分析しきれないし、采配もすごかった。当時は余裕はなかったし、落合野球はスキがなかった。落合野球は優勝するために全部逆算していた。不思議だなと思ってデータを見てもその時は分からない。で、後から考えると全部つじつまが合う。ゾッとしたよ」。かげろうのように実態を見せず、他球団をあざむく。

 予告先発が導入され、一時の恐怖はなくなったが「あの年があったから本当に勉強になった」と猛勉強。志田スコアラーは侍ジャパンに加わるまでに成長した。もし、他球団のスコアラーのスキルアップまで考えていたとしたら…。落合監督の影響力は計り知れない。

 信じるか、信じないかはあなた次第。少しは涼しくなったでしょうか。【ヤクルト担当=島根純】