今年から加入した中日ディロン・ジー投手(32)が、4月25日に帰国した。同21日の広島戦(ナゴヤドーム)途中に、右指先の違和感を感じて途中降板。渡米して検査を受けた結果、手術に踏み切るという。術後の経過によるが、復帰は早くてもシーズン後半になる可能性もある。

 メジャー51勝の実績を持ち、キャンプ中、オープン戦とも片りんを見せた。一時は開幕投手候補にも挙がった。しかし、「小笠原にとってすばらしい経験になる」と、忖度(そんたく)。開幕2戦目から日本のマウンドに立った。

 4試合0勝3敗、防御率4・00。数字だけを見ると、寂しさを感じる。しかし、3月31日の広島戦(マツダ)も3回までテンポ良く投げていたが、4回に味方の拙守も絡み、6回6失点で敗戦。4月7日の来日2試合目、阪神戦(京セラドーム大阪)では、メジャーを通じてプロ最多の125球を投げ抜いた。8回3失点とゲームを作り、リーグ完投一番乗りもしたが、味方の援護なく、2敗目を喫した。翌14日のDeNA戦(横浜)も8回2失点のハイクオリティー・スタートで完投も、またも打線の援護なく敗戦。中日外国人投手史上初の2試合完投も勝利に結びつかなかった。たった4回の登板だったが、随所に「さすが」とうなせる場面をちりばめていた。

 ジーの武器は、コーナーを突くチェンジアップ。打者のタイミングをずらして、打ち取っていく。初戦から随所に「武器」が決まっていた。開幕へ向けて、好調に見えたが、陰ではメジャー時代のチェンジアップの動画を何度も再生して、ベストの状態で迎えようと、画面をにらみ続けていたという。メジャーの実績があっても、キャンプ、オープン戦、シーズンを通じて、日本人と同じ練習メニューをこなしてきた。助っ人でなく、ナインにとけ込む努力を続けていた。

 グラブをはめる左手首には、タトゥーが彫られている。当時、漢字のタトゥーが流行り、ジーも入れたという。「大学時代に入れた。若気の至りだよ」。1960年代に活躍した英国の喜劇俳優とそっくりなハイトーンの声で、本人は照れていた。意味も知らずに入れた文字は「力」。終盤でもいい。もう1度、右腕の投球を見てみたい。「努力」「制球力」「力投」「魅力」…。多くの「力」を携えて再び帰って来ることを期待して。【中日担当 伊東大介】