ヤンキース田中将大投手(29)とエンゼルス大谷翔平投手(23)が、27日(日本時間28日午前2時5分開始)の試合で初対戦する。

 ヤンキースタジアムは「ルースが建てた家」と呼ばれる。右翼317フィート(約95・7メートル)と、レフトより約1メートル狭い。かつ右中間に空間があって風が抜ける。ヤ軍で防御率2点台をクリアした投手は、97年のデビッド・コーン、アンディ・ペティットまでさかのぼる。道路1本を挟んで09年に建て替えられたが、左の長距離打者にとって非常に有利な条件をそのまま残している。

 だからといって大谷が有利とは、一概に言えない。

 グラウンドに覆いかぶさるようにスタンドが積み上がり、熱心なファンの野太い声がよく響く。培ってきた歴史と相まって、大谷の本拠地エンゼルスタジアムと違う濃厚な空気が充満する。ペン先鋭いニューヨークメディアと日本人メディアで、ロッカールームも人いきれだろう。もまれ続けて5年目、田中には地の利がある。

 メジャーの日本人対決は今や特別じゃないが、見る側はワクワクする。取材を受ける側は、どんな心持ちになるのだろう。2年前の夏、田中とマリナーズ岩隈が投げ合う試合を取材した。意気込みや相手への思いなどなど。毎度毎度、同じ質問をされて面倒じゃない? 自分みたいな“一見さん”みたいな記者も来るし…2人に聞いてみた。

 田中 注目していただき、大きく取り上げてもらえる。ありがたいことなんです。「今の自分」を見てもらいたい気持ちがある。メジャー1年目はたくさん注目をいただいて、徐々に…の現状。いい時もあれば、うまくいかない時もある。結果はもちろん出る。ただ結果だけじゃなく、今の自分のボールだったり、プレーだったり、正直なところを見てもらいたい。結果を求めないといけないけど、結果とは少し違うところでプレーしている自分もいる。こっちでやっている方は、みなさんそうだと思うんです。

 岩隈 面倒なんてことは、まったくないですね。遠いアメリカで『元気にやってます』という姿を日本の方に伝えたい。勝ち負けはもちろんですけど、日本人同士の時は特に気合が入ります。ボクだけじゃなく、2人とも元気だから対戦できる。そんな気持ちがあります。できれば『大変な環境の中で、頑張っているんだな』と伝われば、一番うれしい。何が伝わる投球ができればいいです。

 凡人の想像より、ずっと大きな志を抱いて海を渡っている。日本人メジャーとしての自己実現と、自分が周囲へ与える影響、果たすべき使命。個と全体を見渡せている。当の本人たちが特別感を持って楽しむんだから、乗っからない手はない。ヤンスタでマー君VS大谷。極上の対戦を純粋に楽しむだけだ。【宮下敬至】


 ◆宮下敬至(みやした・たかし)99年入社。04年の秋から野球部。担当歴は横浜(現DeNA)-巨人-楽天-巨人。16年から遊軍、現在はデスク。