第23回イチロー杯争奪学童軟式野球大会の閉会式のメダル授与で選手と話すイチロー(2018年12月23日撮影)
第23回イチロー杯争奪学童軟式野球大会の閉会式のメダル授与で選手と話すイチロー(2018年12月23日撮影)

名古屋に駐在していた頃、年末になると愛知・豊山町に向かうのが恒例だった。「イチロー杯争奪学童軟式野球大会」を勝ち抜いた野球少年たちが閉会式に出席。イチロー本人が子どもたち1人1人にメダルをかけ、目の前でマイクを握る。時には決断することの重要性。時には失敗することの大事さをやさしい言葉でゆっくりと語りかける。「いじめ」について語ったこともあった。

イチロー引退のニュースにイチロー杯の関係者にも話を聞いた。NPO法人「ジュニア・ベースボール・サポート豊山」の副理事長を務め、96年から始まったイチロー杯の開催に尽力してきた河井政三さん(76)は会見を映像で見て「涙が出ました」と振り返った。そして「また同じように来ていただいて試合を見てほしい。指導もしてほしいですね」と、お願い。その影響力はやはり計り知れない。

「野球の底辺を広げたい」というイチローの思いから始まった大会には、現在は約200チーム近くが参加している。毎年のように規模が拡大し、中日田島などプロ野球選手も輩出した。強い信念と継続する力。この大会の表彰式を訪れる度に、有言実行のイチローを実感する。【阪神担当 桝井聡】

「イチロー」コールで待ちわびたファンの前に姿を見せ、場内一周するマリナーズのイチロー(2019年3月21日撮影)
「イチロー」コールで待ちわびたファンの前に姿を見せ、場内一周するマリナーズのイチロー(2019年3月21日撮影)