「最後のPL戦士」の呼び名が「オリックス期待の若手」に変わる日も近いのではないか。PL学園(大阪)出身のオリックス7位、中川圭太内野手(23=東洋大)が、奮闘している。プロ初先発で7番・三塁に座った4月24日ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)の9回、守護神の森から起死回生の同点三塁打を放ち、西村監督に通算200勝をプレゼント。5月10日楽天戦(ほっともっと神戸)では先発ローテーション投手の美馬からのプロ1号で、接戦勝利に貢献した。

練習では目を引くことは少ないが、試合に入れば勝負強さを発揮し、本来の二塁以外の三塁、外野も大きなミスなく守る。本番に強い。西村監督は「状況に応じた打撃ができる。野球をよく知っているなと感じます」と、中川の本番力を分析。田口野手総合兼打撃コーチも「いろんな経験をしてきた選手だなと感じます」と見る。

大阪・富田林市のPL球場。バックネット裏に、学校関係者らが試合を観戦できる小部屋がある。高校時代の大会中、中川らは試合を終えるとそこで他校の試合を見ながら、88年春夏甲子園連覇の主力だった深瀬猛コーチの講義を受けた。「この状況ならどういう打撃をする? どう守る?」とコーチが問いかけ、中川らが答える。当時は野球経験がない学校長が監督。かつてのPL学園なら当たり前だった高校球界トップレベルの指導が難しい状況下で、中川らは学べる限りの知識を懸命に学んでいた。試合に入れば中川が、チームを動かす監督だった。

強豪の東洋大でもまれ、プロから指名を受ける存在になった。その前の、当時のPL学園が置かれた状況から生まれた特異な経験も、見逃すことはできない。6月に入り、少し疲れが見えてきたが、1軍を死守する粘り強さにも期待したい。【遊軍=堀まどか】

オリックス対ソフトバンク 5回裏オリックス2死一、二塁、中川は中前適時打を放つ(2019年5月28日撮影)
オリックス対ソフトバンク 5回裏オリックス2死一、二塁、中川は中前適時打を放つ(2019年5月28日撮影)