「もう2年なんですね。早いな」。西武平井克典投手(27)が言った。

17年6月28日、投手コーチだった森慎二氏が、多臓器不全で亡くなった。42歳。「あのときは福岡で、慎二さんが体調悪いって話をしていた。『大丈夫ですか?』って聞いたら『大丈夫、大丈夫。ちょっと病院行ってくるわ』って。少しの間いなくなるって聞いてたんですけど、そのまま…」。別れは突然だった。

社会人からプロ入りした年だった。右も左も分からないプロの世界。少し緊張していると「おまえ、何緊張してんだよ!」と笑って突っ込まれた。「アニキみたいな存在でしたね。何かあればいちいち相談していた」と思い返す。

型にはめられることなく、自分らしさを求められた。フォークをものにできていなかったとき「人のマネをしなくても、自分のオリジナルを出せばいいじゃないか?」と言われ「右だろうが、左だろうが、落ちればいい」と割り切れた。きれいに真っすぐ落ちる必要はない。サイドスロー気味に投げ落とすフォークの軌道が、今では大きな武器になっている。

今季70試合を終え、37試合に登板。シーズン76登板ペースで、勝っているときはもちろん僅差で追う展開でも任されている。自然と球団記録でもある稲尾和久の登板78試合も視界に入る。でも平井は言う。「登板数に今はこだわっていない。それよりも内容。そっちの方が大事」。自分らしく投げる。アニキの教えを染み込ませ、今日もマウンドに上がる。【西武担当 栗田成芳】

西武ベンチにかけられた故森慎二コーチのユニホーム(2018年6月28日撮影)
西武ベンチにかけられた故森慎二コーチのユニホーム(2018年6月28日撮影)