芸能人は歯が命ならば、プロ野球選手は筋肉が命の時代なのかもしれない。楽天ドラフト3位の慶大・津留崎大成投手(22)が21日、仙台市内のホテルで入団交渉を行い、契約金6000万円、年俸1000万円で合意した。

お決まりの問答で爆笑を誘った。モットーは「筋肉は裏切らない」。筋トレ好きならばと、オリックスの“マッチョマン”吉田正尚と対戦したいかと水を向けると「対戦したいよりも、一緒にトレーニングしたいですね」とキッパリ。筋肉談議に思いをはせた。

ぶっとい腕でプロの扉をこじ開けた。最速は153キロ。「セールスポイントは速い変化球。鍛えていきたい」と鋭いカットボールやフォークで打者をねじ伏せる。前日20日には明治神宮大会で19年ぶりに日本一を成し遂げた。パワーピッチャーへの転機は慶応高3年時の10月。右肘内側側副靱帯(じんたい)の再建手術を行い、ボールが握れない間に「ダルビッシュさんが基礎筋肉を鍛えるのが大事と言っていた」とウエートトレーニングに目覚めた

だからこそ憧れは野球選手ではなく、ボディービルダーの合戸孝二氏を挙げる。目の治療に必要なステロイド投薬を大会の禁止薬物に指定されているため拒否。「狂気の男」と呼ばれる伝説的な男だ。「執念がすごい」と感銘を受け、自らも筋肉との対話に励み続けてきた。

大学のシーズン中もトレーニングは欠かさず、週6度。特に「僕は登板前に鍛えた方が力が入る。土、日の登板前、金曜日にはベンチプレスをすると調子が良かった。野球界のセオリーには反していると思うんですけど」とトレーニングの効果を説明。一昔前ならば肩の可動域が狭くなると敬遠されてきたが、自慢の大胸筋に刺激を与えて結果を残してきた。

カブス・ダルビッシュや巨人沢村は一貫してトレーニングの重要性を説き、昨年はヤクルト中山が「きんに君」の愛称で注目を集めた。楽天では過去に西田(現ソフトバンク)、ラッツ、ボウカーの3人が「筋肉3兄弟」を結成。言葉が通じなくとも、朝の筋トレで絆を深めていた。昭和の根性練習だけでなく、近代的なトレーニングは野球界に確実に根付いたようだ。

津留崎は言う。「毎日の積み重ねで筋肉は大きくなるし、それが自分の出力も高める」と。会見後は「仙台駅前にもゴールドジムがあったんで、これが終わったら行こうと思ってます」と爽やかに笑った。筋肉は1日にしてならず。文字通りの“剛腕”が杜(もり)の都にやってきた。【島根純】