1月29日、阪神の新外国人ボーアの入団会見が行われた。メジャー通算92発で虎では中軸として大きな期待を寄せられている。チーム浮沈のカギを握るといっても過言ではない。その彼のコメントが、印象に残るものだった。

「チームにとけ込めるように、と思っています。日本語ももっと勉強して。できる限り勉強しているつもりですが、もっと学んで。チームメートのこと、チームのことをもっとよく知って、とけ込んでいきたい。強いチームは選手同士でもしっかりとコミュニケーションがとれている。1つになれているチームが上にいく。1つになれるように、しっかりとけ込んでいきたい」

ラグビーではないが、まさに「ONE TEAM」。同じように大砲として期待されるサンズも、日本やチームになじもうとする姿勢をみせていた。2人への期待がふくらむ会見だった。

キャンプイン目前。沖縄先乗り組を取材している記者からも、選手が順調に調整しているとの連絡が続いている。どんなキャンプになるだろうか。

私にとっては、チーム担当として9年ぶりの春季キャンプ取材。今年48歳となる年男だが虎番1年目だ。見どころも整理してみた。

◆先発投手争い 育成横山をのぞき、1軍キャンプに先発候補14人がいる。昨年10勝の西勇、同9勝の青柳は先発の軸として期待されている。同じ右投げでは藤浪、中田、秋山、小野、望月、馬場、浜地、新外国人ガンケル。左腕で期待が大きいのは高橋で、岩貞、ガルシア、飯田もいる。2軍には岩田ら実績のある投手も控える。秋山、岩貞、藤浪ら多くの投手が秋季キャンプで復調、復活の気配をみせていた。6枠を巡っての争いは激しさを極めそうだ。

◆救援投手争い ジョンソン、ドリスが抜けて再編成の必要があるが、こちらも高いレベルでの争いとなる。矢野監督はすでに抑えとして藤川を明言。能見、岩崎、エドワーズ、スアレス、守屋、谷川、伊藤和が1軍キャンプ同行となった。新戦力としてエドワーズ、スアレスがどうかが最も気になる。手術明けの島本は2軍キャンプスタートだが、順調に回復すれば早い段階での1軍合流は間違いないと見る。ちなみに先発候補のガルシアが中継ぎ争いに加わる可能性もある。

◆内野手争い メジャー通算92発のボーアは4番一塁を期待される。マルテと大山が三塁を争う図式になるだろう。そして二遊間のポジションは誰が奪うのか、横一線の状況。上本、木浪、北條、熊谷、糸原、植田。誰がメンバー入りするかで打線の組み方にも影響でそうだ。

◆外野争い 福留、糸井、近本の布陣を崩す存在が出てくるか。韓国球界打点王のサンズの打力はいかに。守備力も上がってきた高山が食い込むか。2軍スタートとなったが中谷らの巻き返しも見てみたい。サンズは外角のスライダーを見極められるかという点も1つのポイントだろう。

◆外国人枠争い ご存じの通り、1軍に入れるのは外国人4人まで。投手・野手の枠の振り分けがどうなるか、8人体制でこの争いも激しい。ボーアがどれだけ日本の野球に対応できるかが重要で、彼が成功するかどうかで打順も守備シフトも大きく布陣が変わる。左投手に対してどうか、高めの直球と落ちる球を軸とした配球に対してどうか、特に見てみたい。

ほかにも江越、陽川らの成長はいかに。梅野がリードする捕手争いも原口らの存在を忘れてはいけない。まさにどのポジションも競争の2文字がぴったりだ。

一方で「守備力と打力の改善」も押さえなければいけないポイント。19年12球団ワーストの102失策だった守備力の改善は? 同じく12球団ワースト538得点の打力の改善は?

私はいつもこの時期になると、22~23年ほど前に聞いた言葉を思い出す。ダイエー担当として駆け出しだったころ。球団社長などを歴任した根本陸夫さんは言っていた。「シーズンが始まる前に順位は決まっている。補強とキャンプで。シーズンでは、決まっている順位を証明するだけだ」。もちろん極論で、キャンプはそれだけ重要と言いたかったのだろう。

この春、虎にとって、どれだけ濃密なときとなるだろうか。取材する側も胸が高ぶる季節がきた。【阪神担当 松井周治】

沖縄で自主トレが開始しランニングをして体を温める阪神ナイン(撮影・上田博志)
沖縄で自主トレが開始しランニングをして体を温める阪神ナイン(撮影・上田博志)