野球は地味に勝つスポーツだと思っている。派手な飛距離のホームラン。160キロを超える剛速球で三振を取る。足を使ったスピーディーな攻撃。観客が一気に沸き上がる瞬間は、野球の面白さのひとつであることは間違いない。しかし、勝つためには目立たないプレーこそが大事だと思っている。

日頃から勝負を決めた1球だったり、勝負を決めた一打だったりに目を向けて記事を書いている。それは大事なことだが、実は取り上げたいプレーも隠れている。勝負を分けたもの。それは「守備」の力であることが多い。

先日、ソフトバンクの大阪遠征でオリックス戦を取材した。6日連続で同じような試合展開となり「飽きる」ことがあった。オリックスが「守備」で崩れ、ソフトバンクが「守備」で地味にアウトを重ねていく姿だった。特に周東と柳田のプレーには「お金」が取れると思わざると得ない。

17日は周東の「足」に驚かされた。先発東浜が右足に打球を受けて3回で降板。スクランブル登板した笠谷に対して、4回先頭打者の吉田正が左翼線へフラフラとした打球を打ち上げた。誰もがファウルと思ったが、スルスルと忍者のように走り抜けた遊撃手の周東がフェンスの手前でスライディングキャッチ。球場がどよめいた。攻撃だけでない。守備でも「足」を武器に、笠谷を救った。19日でも、センター前へポトリと落ちそうな打球を、忍者のように走った周東は何事もないように取って見せた。名手今宮に代わっての出場だが守備力は落としていない。チームとしての強さは、ここにも表れている。

また、19日は2点リードで迎えた8回無死満塁から中飛を処理した柳田が三塁へレーザービーム。犠飛で1点は失ったがピンチを広げることなく同点を防いでもいた。

17年シーズンは94勝(49敗0分け)、2位に13・5ゲーム差をつけて優勝した。この年のチーム守備率が9割9分3厘。プロ野球新記録を樹立したのは有名な話だが、地味なプレーこそがチームの底力となる。

何点入るか分からないというような打撃戦も面白いが、四球と失策がつきものだ。サッカーの試合かと言いたくなるように、なかなか点が入らない試合の方が私は好きだ。守備での好プレーが必ず見られるからだ。【ソフトバンク担当・浦田由紀夫】

19日、捕球し二走安達了一の三進を刺す(撮影・上山淳一)
19日、捕球し二走安達了一の三進を刺す(撮影・上山淳一)