<中日-ヤクルト>◇6日◇ナゴヤドーム

大野雄大(右)から花束を受け取りハグをする吉見一起(撮影・森本幸一)
大野雄大(右)から花束を受け取りハグをする吉見一起(撮影・森本幸一)

中日吉見一起投手(36)がプロ最後のマウンドに上がった。対戦したヤクルトの先頭山崎をカウント1-2から外角への138キロの直球で空振りの三振に打ち取り、現役最後223試合目の登板を終えた。

   ◇   ◇   ◇

吉見が引退会見で思い出の試合の1つとして挙げたのが19年6月22日の日本ハム交流戦だ。先輩金子と投げ合えたことを喜んだ。この一戦は、チームにとってもベテランの頼もしさを再確認した1勝でもあった。

この年、吉見は開幕ローテに入ったが、3試合で2軍落ち。同15日のウエスタン・リーグ阪神戦で先発してから、中6日で日本ハム戦を迎える予定だった。しかし2軍戦は雨で中止。スライド登板すれば、中5日の間隔となり、ベテランには負担がかかる。1軍登板を回避するか。吉見は「スライドして行きますよ」と首脳陣に即答したという。

19年6月22日、日本ハム戦に勝利し声援に応える吉見
19年6月22日、日本ハム戦に勝利し声援に応える吉見

1軍は大野雄、柳、ロメロがローテの軸だったが、4番手以降は若手中心の背景があった。吉見の登板後、阿波野投手コーチは元エースの判断を称賛した。「ベテランだし、登板までのルーティンもあるはず。予定されていた登板までの調整も変わってしまう。それでも、打診したときに考えるそぶりもなく、(スライド登板で)応えてくれた。チームの事情、チームのことを思ってやってくれた」。精密機械のようなコントロールが注目されるが、フォア・ザ・チームへの思いは誰にも負けていなかった。【中日担当=伊東大介】

マウンドのプレートの土を手で払う吉見一起(撮影・森本幸一)
マウンドのプレートの土を手で払う吉見一起(撮影・森本幸一)