米国並に? 移籍市場活発化の流れは不可避か- 少し前の話になるが、8月18日のロッテ-西武戦(ZOZOマリン)を取材した。

今年6月にDeNAからトレードでロッテ入りした国吉佑樹投手(29)が、3点リードの7回から登板。1回を無失点に抑えて勝利に貢献してホールドを記録。新天地でも変わらぬ力強い投球は、昨季DeNA担当だった記者の目にも非常に頼もしくうつった。

東京オリンピック(五輪)の開催された今季は「トレード期限」も従来より1カ月延長され、8月の半ばにも日本ハム-西武間で2対2の交換トレードが成立した。また昨季は巨人-楽天間だけで3例もトレードが行われたように、数年前から「移籍市場の活発化」が、より進んでいるように感じる。

野球記者の私だが、NBAやNFLなど米国プロスポーツが好きで、よく見ている。そこでは大物選手の全盛期での移籍、FA、トレードは日常茶飯事。特に支配下選手数の少ないNBAでは、数年で選手がほぼ丸ごと入れ替わり、気付けばまるで別チームになっていることも珍しくない。

選手側にとって移籍の自由度が高く、評価を上げてキャリア、サラリーアップしやすいメリットがあり、チームとしても有力選手の獲得や補強戦略により、中堅から下位のチームが一躍優勝候補に躍り出ることも可能となる。一方で選手の年俸高騰を招き、地方都市など資金力に乏しいチームが苦戦を強いられるなどのデメリットも多数ある。ファンにとっても、ひいきの「ご当地球団の大スター」が、来季には「ライバルチームのエース」になっているかと思えば、心境も複雑だろう。

日本ではサラリーマンは終身雇用が大前提で、入社した会社に定年まで勤め上げるのが当たり前、ある種の美徳だった時代が長らく続いたが、近年はその根本の考え方も変わってきている。入社して数年での転職は当たり前。キャリアアップの道を自ら模索していく流れだ。プロスポーツ界においても、入団した球団でキャリアを終えることが、選手にとって本当に有益かどうかは分からないし、いろいろな選択肢があって当然という時代に移行していくだろう。また一方で、選手側の自由度の高い米国スポーツ界でも「フランチャイズプレーヤー」と言われるように、長期にわたり同一チームの第一線で活躍する選手が特に人気を集め、リスペクトされている事実もある。

個人か組織か。国民性やルール改訂の問題もあり、日本スポーツ界が、すぐに米国に追随するような動きにはならないだろうが、現実社会の動きを見ても、そうした大筋の流れは止められないだろう。

冒頭の国吉だが、今やパ・リーグ首位(9月6日現在)のロッテで「勝ちパターン」に定着。キャリアアップした右腕の姿に、多くのことを考えさせられた。【遊軍=鈴木正章】