その変貌ぶりに誰もが驚いただろうが、私も驚いた。オリックスのプロ6年目、杉本裕太郎外野手(30)が32本を放ってパ・リーグの本塁打王に輝いた。昨季まで通算9本塁打だった「ラオウ」がついに覚醒。25年ぶりリーグ優勝の立役者。その1人であることは間違いない。

オリックス球団を担当していた3年前、仙台の夜を思い出す。7月中旬。杉本はシーズン初めて出場選手登録された試合で4回にバックスクリーンへ満塁本塁打を放ちヒーローになった。試合後、ベンチ裏で数人の記者に囲まれたラオウは、感極まった。こぼれ落ちそうな涙を必死に拭った。

「ファームでも全然、ボールが前に飛ばなくて…。今日打てなかったら終わりというくらいの気持ちでした」。確かに調べてみると2軍戦でも打率1割7分3厘、0本塁打だった。当時のラオウは2軍の遠征に同行することなく舞洲に残留。毎日、もがき苦しんでいた。

大卒、社会人を経てプロ入りし、くすぶっていた男が30歳を迎えて大ブレークを果たす。こんなストーリーもやっぱり人を引きつける。

阪神矢野監督は9日に行われたオーナー報告の際にこんな話をした。今季は佐藤輝、中野、伊藤将らルーキーの活躍が話題に上った時だ。「でも他の中堅、他の若手も黙っていないと思う」。新戦力に目がいきがちだが、今季苦しんできた中堅が、来季のカギを握るのでは? そんなことも考えた。【阪神担当 桝井聡】