開幕前の3月。新戦力が紙面をにぎわせている。

巨人ではドラフト1位の大勢投手(22=関西国際大)、同3位の赤星優志投手(22=日大)らルーキーに加え、若手がめきめきと頭角を現している。トミー・ジョン手術から復帰した2年目の山崎伊と3年目の堀田。さらに新外国人も続々と来日している。アダム・ウォーカー外野手(30=米独立リーグ)や、グレゴリー・ポランコ外野手(30=パイレーツ)ら新顔がお披露目され、新チームで戦う今季に期待は高まるばかりだ。

一方で、昨季限りでチームを去る選手もいたことを忘れてはならない。その1人がエンジェル・サンチェス投手(32)だ。韓国SKで17勝5敗の圧倒的な成績を残し、19年オフに加入した右腕。マウンド上では一切表情を変えず、淡々と投げ込む姿が印象的だったが、普段は一転して、明るく、笑顔が魅力的なナイスガイだった。あいさつのときには常に「ハーイ」と笑う。打撃用手袋や靴下にはカタカナで「サンチェス」と刺しゅうを入れた。ジャイアンツ球場の売店のコーラLサイズを報道陣にプレゼントしてくれたこともあった。

さらに、JPOPが大好きで、優里の「ドライフラワー」やONE OK ROCKの「Wherever you are」、徳永英明の「レイニーブルー」などをヘビロテ。驚くことに、日本語はほとんどしゃべれないのにもかかわらず、日本語の歌を難なく歌えてしまう。

全く知らない異国の地に適応しようと明るく努力を続けていたのだろう。だが助っ人という立場はシビアだ。1年目はチーム3位の8勝を挙げ、リーグ2連覇に貢献したが、昨季は負傷に苦しめられた。後半戦の登板機会はなく、14試合で5勝5敗、防御率4・68。ひっそりと日本を後にした。結果が残せなければ、すぐに別の助っ人に入れ替わられる。球団を問わず、外国人選手はみな、1軍の5枠という少ない枠を争いながら、全く文化の異なる異国の地で、孤独に戦っている。そんな中でも明るく、努力する姿には尊敬の気持ちしかない。サンチェスをはじめ、日本でプレーする道を選んでくれた全ての助っ人選手たちには感謝とリスペクトの気持ちを持ち続けたい。【巨人担当 小早川宗一郎】

2021年5月5日 こいのぼりを手に笑顔を見せる巨人サンチェス
2021年5月5日 こいのぼりを手に笑顔を見せる巨人サンチェス