阪神が広島と引き分け、5位に後退した。6月好調の近本光司外野手(27)が2-3の9回2死から同点適時打。2戦連続の猛打賞で延長に持ち込んだ。20試合連続安打で打率も3割に乗った。チームは広島に開幕から9敗2分け。開幕から同一カード11戦未勝利は球団ワーストで、首位ヤクルトと15ゲーム差となり逆転への「危険水域」を超えた。2年連続最多安打へひた走る選手会長を中心に、甲子園に帰って逆襲を期す。

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コツン、コツン…。5月下旬ごろから、近本はあるルーティンを行っている。甲子園での試合前練習では一塁側ベンチ前のマシンに向き合い、バントする。

3番に座る今、やはり犠打も意識しているのか-。そう問われ、やんわり否定したことがある。

「う~ん、打つ時のツイストの刺激入れるためにやっているんです。バント練習用のあのマシンが、ボールが強いから」

目的は、バント練習ではなく打撃のため。バントのインパクトの瞬間、胸郭下部を捕手方向にわずかにひねる動作をひたすら繰り返している。明らかに、バントのためではないバント練習と分かる。転がしたボールの行方もほとんど気にしていない様子だ。

「ボールを受けて刺激をバチっと入れて、バ~ンと体が開いていっちゃうのを行動制限するんです」

関学大時代から取り組む「胸郭ツイスト」と呼ぶトレーニングには、体の開きを抑える意図があるという。

思えば9回の同点打も、栗林のフォークを極限まで引きつけ、体が開くことなく、しぶとく右前に運んでいた。6月は全17試合で3番に座り、打率4割5厘。原点回帰で得た感覚は、簡単に崩れるとは思えない。【阪神担当=中野椋】