<ソフトバンク9-0西武>◇13日◇ペイペイドーム

西武辻発彦監督(63)の言葉からは温かみがあふれる。

9月は3勝7敗。首位ソフトバンクとのゲーム差は2に広がった。8月31日には9だった貯金は5になった。打線全体が冷え気味。リーグ2冠の山川も調子を落としていた。試合を左右するのが4番。活躍した時はもちろんだが、同時に打てなかった時の責任も伴ってしまう。今季は多少の波はあれど、ここまでバットの勢いが止まるのは初めてだった。辻監督は山川に言った。

「みんなが打てなかった時、どれだけ勝利をもたらしてくれたか。それを考えたら、山川のせいになることはないから。それくらいの気持ちでいるから。肩の力を抜いて行け」

その言葉の効果もあってか。12日ソフトバンク戦。山川は39号2ランを放った。この試合前まで9月は27打数1安打。主砲のバットの久々となる快音だった。

夏から混戦が続いたパ・リーグ。ずっと辻監督は「10試合から15試合」と勝負と考えていた。先を見据え、かねて今の混戦を予見するように戦っていた。「一喜一憂したら、野球なんてできないよ」。「最後に上に行くように」。たとえ競った試合を落としても、目先の敗戦を悔しがるより、切り替えを大事にした。

そして今、ついに残りは11試合になった。指揮官の言葉も変わりつつある。温かみの中に、勝負師の鋭さがこもってきた。首位ソフトバンクとは2ゲーム差。逆に4位楽天も1ゲーム差と足音が大きくなった。13日ソフトバンク戦に敗れた後に言った。

「奮起して明日は何としても勝たないと」

これまで、あまり控えてきたムチ打つような言葉だった。勝負の時、踏ん張り時を迎えた。【西武担当 上田悠太】