「全部書いたんか!?」

兵庫・西宮市の鳴尾浜で有観客開催が4年ぶりに再開された12日、ミックスゾーン付近にコーチ陣の声が響いた。声の先には、阪神ドラフト2位門別啓人投手(18)が、苦笑いを浮かべていた。

開門前から120人以上のファンが球場には詰めかけた。門別は隣接のグラウンドで投手練習を行い、歩道を通ってグラウンドに戻ろうとすると「後ろからも前からも来てた」とファンからのサイン攻めに遭遇。「少し書いて終わるつもりだったんですけど、書いてるうちにすごい行列になってて。どうしていいか分からなくてって感じでした」と、熱気に驚きの表情を見せていた。だが、中には強引に引っ張るファンなどもおり、ケガにもつながりかねない危険な行為。選手への熱い思いは球場での声援で届けて欲しいと願う。

門別のサインは中学2年時に作ったもの。当時、北海道選抜のU-14に選出された際、メンバー内でサインを考え、その時に決めたサインを現在も使っている。はじめはローマ字で作るなど試行錯誤。最終的にはひらがなで「もんべつ」を崩したものに落ち着いたという。「ローマ字だったら、あるあるかなと思って。『もんべつ』というのを、ひらがなで崩して考えてたら、なんかいい感じになったんで」と明かした。

17日のウエスタン・リーグ中日戦(ナゴヤ)では4回2失点でプロ公式戦初勝利を挙げた。だがこの日は30度を超えた気温の影響もあり、最終イニングは球速が減速。「この暑さで、ちょっとバテたところがあった。もっと投げ込んだりとか、暑さ対策してやっていけたら」と、満足はしなかった。

和田2軍監督も「投げる度にいろんな課題が見つかってくる。いろんなことにチャレンジして、いいピッチャーになっていって欲しいよね」と期待を込める新人左腕。1歩ずつ階段を上る。【阪神担当=波部俊之介】

門別のサイン色紙
門別のサイン色紙