3日のソフトバンク戦前、広島新井貴浩監督(46)は今季初めてグラウンドに姿を見せなかった。試合後、報道陣から問われると「私だって、プライベートな時間もあるんですよ」と笑いに変えたが、違った。シーズンの先を見据え、行動していた。

あの日の朝、指揮官はマツダスタジアムのある広島市ではなく、廿日市市にいた。左肩痛が癒え、この日から実戦復帰するデビッドソンに会うため。復帰戦前の練習を由宇ではなく、廿日市市内の大野練習場で行わせる段取りをつけ、自ら出向いて身ぶり手ぶりで指導した。

後日マクブルームにも直接指導したが、外国人選手に指揮官が直接フォームにメスを入れたのは初めて。出場選手登録が抹消されるまで目安とした100打席を超え、打撃フォームを変えずに復帰しても劇的な上向きは期待できない。打撃コーチと話し合い、メスを入れるタイミングと判断したのだろう。

前夜3時間38分のナイター試合で敗れ、球場を後にしたのが23時を過ぎていても関係ない。朝から技術指導と自身の思いを伝えると、すぐにマツダスタジアムへ向かい、14時からの試合の指揮を執った。

自らが動き、直接伝える-。それが新井流。コーチが伝えるのではなく、自ら伝える。電話で伝えるのではなく、直接会って伝える。新井監督がよく使う言葉を借りれば「フェーストゥフェース」で伝える。それが新井流だ。

修正点はテイクバックを取ってからミートポイントまでバットを遠回りさせずに振り出す、1点のみ。指摘はシンプルも新たな打撃フォーム習得のため、実戦2試合を終えたばかりの6日の日本ハム3連戦からではなく、9日からのロッテ3連戦まで待った。

その間の2軍成績は5試合で打率6割1分5厘、2本塁打、3打点、OPS1・821だ。

復帰2試合は無安打も、指揮官から打撃指導を受けてから8戦目となる11日ロッテ戦では佐々木朗から2安打した。「(新井監督が)足を運んでくれて、そのときの指導が非常に役に立ちました」。助っ人は感謝の言葉を口にした。

左打者が多い広島打線の中で、4番マクブルームも再調整となった。鬼門とした交流戦初Vだけでなく、今後のペナントレースにおいても、右の助っ人砲はキーマンの1人といえる。新井監督が「フェーストゥフェース」で伝えた新打法は実を結ぶのか。そんな過程と向き合っていきたい。【広島担当=前原淳】