遊軍記者として複数球団を取材しています。当コラムでは本来なら、偏りなく各球団の話題を取り上げたいところですが、2回連続でDeNAの「投げる哲学者」を取り上げざるをえません。それほど見事なピッチングでした。

今永昇太投手(29)が、7月7日巨人戦(東京ドーム)で自己最多タイの7者連続を含む、球団タイ記録となる15奪三振の力投で6勝目を挙げました。その前日6日ヤクルト戦(横浜)で完投勝利を挙げたトレバー・バウアー投手(32)ばりに何度も雄たけびを上げる姿が話題となりました。

今永の「7連続K」を目にするのは2度目。前回20年8月1日阪神戦(甲子園)の快投は担当記者として取材しています。当時はコロナ禍で観衆は上限5000人。歓声もない敵地での冷静な投球に、「調子が良い時は相手を圧倒して『手も足も出ない』という部分を見せつけていかないといけない。いつでも点を取れると思われてしまってはダメ。圧倒できるところを見せつけていかないと」などと語っていました。

2度目の奪三振ショーも敵地となりましたが、3年前とは状況も変わり、3万9958人の大歓声。巨人の応援団が大音量で奏でるチャンステーマを口ずさみながら、7回1死二、三塁のピンチを連続三振で切り抜けた左腕。何度もほえてガッツポーズを繰り返す姿は、さぞかし気合が入っていたように見えました。

ところが試合後の当人は「(気持ちが)出ているように見えるだけで、自分の中では『引いてる』とまでは言わないですけど、客観的に自分を見て、『今、こうすべきだな』というのを考えながら投げているので。そういうふうにポジティブな要素で見てもらえることは、すごくいいことかなと思います」とサラリ。あえて“バウアーが乗り移った”ようにほえて見せることで、チームやファンの気持ちも高めたということでしょうか。

いずれにせよ、常に落ち着きのある「投げる哲学者」に、バウアーのような熱さも加われば鬼に金棒。後半戦も「冷静と情熱」を備えた左腕の投球に、注目していきたいと思います。【遊軍 鈴木正章】

7月7日の巨人戦 7回裏2死二、三塁、代打岸田を空振り三振に仕留めほえる今永
7月7日の巨人戦 7回裏2死二、三塁、代打岸田を空振り三振に仕留めほえる今永
7月7日の巨人戦 4回裏巨人1死、岡本和真を見逃し三振に仕留めほえる今永昇太
7月7日の巨人戦 4回裏巨人1死、岡本和真を見逃し三振に仕留めほえる今永昇太