日本ハム新庄剛志監督(51)の粋な演出にしびれたファンの方も多かっただろう。9月20日に行われた西武対日本ハム戦(ベルーナドーム)。今季限りで現役引退を表明した木村文紀外野手(35)のラストゲームとなった試合だが、その前夜からエンターテイナーの新庄監督は予告していた。

19日の試合後の囲み取材中に「明日、木村君を4番ライトでスタメンで。今のところ2打席を考えています」と質問される前に自ら話した。すぐにネット記事にもなった。20日へ向けた盛り上がりも徐々に高まることも見越して、あえて“予告先発”を仕掛けたに違いない。

当日は、さらに見る者をうならせる“采配”で感動させた。右翼でスタメン出場させた木村を、3回の守備から左翼に守備位置を変更させた。野球界NO・1の演出家の狙いは、こうだ。「(2回までは右翼や一塁側に陣取る)ファイターズの木村君を応援してくれたファンへ。(日本ハムでは)2年間でしたけど、その方々に守っているところを見せて。(3回からは)15年間、木村君のことを応援してくれた(左翼や三塁側に陣取る)西武ファンみんなに最後の姿を見せて」。球場に詰めかけたファンの思いにも応える名演出だった。

そして、4回の守備で交代させるのだが、あえて左翼守備に就かせてから球審に交代を告げた。「交代した時にライオンズのベンチの前を通って、ちょっと握手してもらいたいなと思って」と期待した通りに、三塁側ベンチ前には西武の選手、首脳陣が出て木村も全員と握手。そして、一塁側ベンチ前で待っていた新庄監督と抱き合って号泣した。

新庄監督は「僕の精いっぱいの、ない頭を振り絞って(考えた)」と笑いながら振り返りながら、報道陣に「どうすか? あれ。良かったですか?」と逆質問。新庄監督、さすがでした。【遊軍 木下大輔】

新庄監督(左)と握手を交わす日本ハム木村(撮影・たえ見朱実)
新庄監督(左)と握手を交わす日本ハム木村(撮影・たえ見朱実)