今年も高校野球の季節がやってきた。18日にセンバツが開幕。阪神の投手指名練習が行われた同日、甲子園の室内練習場からも聞こえるブラスバンドの演奏に耳を傾けながら、近本光司外野手(29)の言葉を思い出した。

「俺、あんまり高校野球見いへんからな」

2月の沖縄・宜野座キャンプでの終盤、そんなことを話していた。春、夏と高校野球のテレビ中継は、熱心には見ないタイプ。プロ野球選手は、自身も経験した高校野球に興味があるものだと、勝手に思っていたから驚いた。母校の社(兵庫)の場合は別だと思うが「高校野球NG」の理由が、なんとも近本らしいと感じた。

「高校野球見て、刺激入ってしまうこともあるからな」

高校球児の打撃などのプレーの残像が、自らの思考に入り込んでしまうことがあるらしい。それが進化へのヒントになるなら別だが、必要のない刺激として頭の中に残る可能性だってあるということだ。

オフシーズンから自らのやるべきことを徹底して磨いてきたからこそ、そう言えるのだろう。プロのプレーはもちろん、高校生に対してもそんな視点を持つのは、独特だと思ったものだ。

オープン戦は打率3割6分6厘で12球団トップ。オープン戦の打率3割フィニッシュは過去に、レギュラーシーズンで打率3割超えをマークした21年のみ。目標のシーズン200安打へ、順調な歩みを進めている。

普段取材していても、数字には特にこだわりのない男。ただ、オープン戦の打率には「数字が残っているから思い切ってできることもある」と、珍しく思いを語る。

開幕まで10日を切った。今年も時に熱く、時に理解しがたいこともある「近本語録」を追いかけていきたい。【阪神担当 中野椋】