今年のソフトバンクはオープン戦期間ならではの光景が数多く見られた。分かりやすい例は育成だった川村、緒方、仲田が異例の同日支配下登録。オープン戦はこれ以上ない1軍でのアピール機会だっただけに、チャンスをモノにした。柳田や近藤ら主力を休められるし、目をギラつかせた若鷹のハッスルプレーは新鮮で気持ちが良かった。

「1日限り」の条件ではあるが、22年ドラフト育成14位、盛島稜大捕手(19)も1軍を初体験した。12日の巨人戦(鹿児島・平和リース)、20日の阪神戦(ペイペイドーム)。1軍捕手がファームの試合に出場するための補充要員ではあるが、本人にとっては大きな刺激だったようだ。「3、4軍とはレベルが違いすぎました。いい経験になりましたね。監督の目の前に座っているときはガチガチに緊張しました。一番大きな声を出していたのは…川瀬さんですかね」。沖縄・興南出身のプロ2年目。糧にしてほしい。

球団スタッフの1軍体験もあった。22年1月に加入したスペイン語通訳の福岡吉央氏。普段はファームの育成外国人を担当しているが、オープン戦中盤にペイペイドームに姿を見せた。「体験です。通訳も1軍を知っておかないと選手に実情を伝えられない。例えばオスナが試合前にどんな練習をどんな意識で行っているかを、(育成の)アルメンタやフェリックスに伝える目的もあります」。小久保監督は1軍から4軍まで、全員が同じ方向に進むことを理想にしている。その一環として通訳が伝道師の任務を担った。

今季は西武からFA加入した山川の存在もあり、間違いなくパ・リーグの優勝候補に挙がってくる。ド派手な戦力の陰で、若手の底上げも忘れていない。【ソフトバンク担当=只松憲】

オスナと福岡吉央通訳(2024年3月撮影)
オスナと福岡吉央通訳(2024年3月撮影)