山手線沿線にはバッティングセンターが5軒ある。新宿に2軒、大塚に1軒、秋葉原に1軒。その中の1つに、日本一のお店がある。「池袋バッティングセンター」は14階建てのビルの最上階にあり、高さは86メートル。店長の秦秀樹氏(50)は「おそらく日本で一番高い場所にあるバッティングセンターだと思います」と笑う。

 
 

池袋駅東口から徒歩5分ほど。買い物客でにぎわうサンシャイン通りを歩いて行く。周りにはアパレル店やゲームセンター、飲食店など、店が立ち並び一見バッティングセンターがあるとは思えない。商用ビルに入り、エレベーターで14階を押す。ドアが開くと雰囲気が一変、打球音が響く。

打席からは副都心が一望できる。目線より高い建物はサンシャインシティのみ。眼下に広がる街へ向かって打っているような錯覚に陥る。開放感に包まれながら打撃ができることが魅力だ。秦店長は「初めて来たお客さんは『こんな高い所につくったの』と驚かれています」と得意げだった。

週に1回打ち込みにやってくるという男性(28)は「最初に来たときは高くてびっくりした。景色がきれいで、他のバッティングセンターとは違う。同じ建物に映画館もあったりして、買い物や遊びついでに通っています」と汗を拭いながら語った。79年に営業を開始。テナントしているビルの建て替え工事に伴い16年に1度は閉店したが、昨年7月に復活した。サブカルチャーの街らしく、客層は若者が多い。中には女性グループも見られる。買い物や遊びに来たついでにふらっと立ち寄れるのが池袋にある強みだ。

地上86メートルにある池袋バッティングセンター
地上86メートルにある池袋バッティングセンター

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、時間を縮小しながらの営業。マスクの着用を呼びかけるなど、感染対策を徹底している。東京都が定めたガイドラインでは自粛対象にはならなかったが、売り上げは普段の10分の1ほどに。それでも緊急事態宣言が解除され、少しずつ客足が戻ってきた。野球好きにとって貴重な都心のオアシスで、注意しながらも「つかの間」の気分転換はどうだろう。秦店長は「今の時代、なかなかフルスイングはできない。気軽に来てスッキリして帰ってもらいたいです」と願っていた。【湯本勝大】