<センバツ高校野球:東海大相模1-0鳥取城北>◇26日◇2回戦

山陰地方の雄、鳥取城北が甲子園常連校に堂々と渡り合った。東海大相模戦で先発した山内龍亜(りゅうあ)投手(3年)の力投が光った。9回途中まで4安打1失点。「最後まで投げたかったけど、打たせて取る。自分の中で良い投球はできました」。逆境にも腐らず、くじけず、ひたむきに乗り越えてきた。“ご褒美”の聖地だった。

2度のけがと闘った。入学前に右肘を疲労骨折。1年秋に完治したが、追い打ちを掛けるように腰の分離症を発症。2年秋、ようやく実戦に復帰した。1年近くマウンドから遠ざかり、学校のグラウンドで打撃投手をひたすら務めたこともある。そんな右腕を支えてくれたのは、まさに「地の利」だった。

鳥取にはプロ野球選手も多く足を運ぶ場所がある。トレーニング施設「ワールドウィング」だ。専用マシンを用いて、初動負荷理論に基づくトレーニングを行う。マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(47)をはじめ、多くの野球選手が採り入れている。神経系と筋肉を連動させるもので関節可動域は広がり、故障防止にも結びつく。

同校ではスポーツ科学コースの生徒が、体育の授業で行うというから驚きだ。施設は自転車で10分の距離にある。数年前、校内のトレーニング室に専用マシンが約20台、導入された。授業では週3~4時間の初動負荷トレーニングを行う徹底ぶり。山内は「半年くらいで効果を実感しました。自分が思っていたより2カ月くらい早く(腰が)治った」と恩恵を受けた。投手担当の大森仁コーチ(36)も「3年間を通してけがが少ない。故障してもすぐに治る、回復力が早いです」と効果を明かした。

山内は沖縄・名護市出身だ。両親の後押しで越境を決意した。昨秋の公式戦登板は2試合だけだったが、人一倍練習に精を出す姿勢を買われて、この日、夢の大舞台に立った。山木博之監督(45)は「どこかで行かせたいと思えるくらいの頑張りを冬にしていた。出来すぎくらい。本当にナイスピッチングでした」と好投をねぎらった。

チームは1回戦で、県勢13年ぶりの1勝を挙げた。40年ぶりの8強入りこそ逃したが、強豪に挑んだ。山木監督は「鳥取、山陰の学校が全国でも勝負できるんだと思ってほしい」と言う。1時間46分の好ゲーム。その中心に、山内がいた。【望月千草】