プロ野球の前半戦を振り返ると、大卒ルーキーの活躍が目立った。投手で言えば、日本ハム伊藤大海、楽天早川隆久の2人。細かい成績などは省略するが、ともに開幕ローテーションに入って、7勝を挙げた。力のあるパ・リーグで立派な数字と言える。

前半戦の中盤から、早川の左打者への投球が話題になり始めた。左打者の内角へのボールが少なく、それが被打率の高さの原因の1つではないか、と言われた。内角に投げることは大切だが、無理に投げることでピッチングパターンが狂うこともある。早川クラスならば本人がなぜ内角に投げる必要があるのかを自覚、納得するのを待つのも方法ではないか。

6月、阪神戦の3回表2死、中野(左)に左前打を浴びる楽天早川
6月、阪神戦の3回表2死、中野(左)に左前打を浴びる楽天早川

2月のこの連載で、早川は投手としては完成され、勝てる要素の全てを持ち合わせているので、最初は大学時代の投球パターンで勝負し、問題が起きればその時に考えればいいと書いた。すでに7勝もする投手。彼には彼の考え方があり、時期が来ればトライしていくだろう。

ここからは独り言である。投手コーチの観点で見れば、投げ方的には左打者のインハイに投げるのは難しく見える。インパクトは上からたたくタイプで、低めの方が投げやすいのではないか。私なら「軸足の足首に投げろ」と伝える。個人的なイメージだが、感性が優れた投手に見える。経験上、このタイプは具体的に言った方が伝わる。

あくまでも、1つの目安で足首を挙げたが、要するに打者の軸足を動かすことが狙いなのである。もちろん、当てるのはダメで、投げる時のイメージの話。膝元なのか、ふくらはぎなのか、足元なのか。打者の軸足が一番動くであろう場所に投げられれば、非常に効果的なボールとなる。

ストライクはいつでも投げられる投手。今は早く追い込むことを重視しているかもしれないが、プロのトップレベルで大事なことはボール球をいかに使うか。単にボール球を投げるのではなく、前のボールから逆算して投げることが重要である。

ルーキーの場合、最も大事なのはコンディションの維持だ。大学生は春、秋のリーグ戦で、春は5月末まで。4年間染み付いたものは簡単には抜けず、多くの大卒選手が6月には疲労で、思うようなプレーが難しくなる。早川は制球力とキレで勝負するタイプで、ヘッドの走りが悪くなると打ちやすくなる。6月13日の阪神戦がそうだった。

侍ジャパンとの強化試合では、久々の実戦でタイミングが合わなかったのだろう。1回はトップができず、ホーム方向に体が流れて、「1、2、3」のタイミングだったが、2回以降は「1、2~の3」と修正した。修正能力の高さはさすがで、体の状態さえ戻れば後半戦も期待できる。(次回は8月下旬掲載予定)

小谷正勝氏(2019年1月撮影)
小谷正勝氏(2019年1月撮影)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。