田村藤夫氏(62)がナゴヤ球場で行われている中日の秋季練習を取材した。今季5位に終わったチームは立浪新監督の下、来季の逆襲を期す。期待の若手を重点的にチェックした。

4日、中日秋季キャンプで石川昂(左)にアドバイスする中村紀打撃コーチ
4日、中日秋季キャンプで石川昂(左)にアドバイスする中村紀打撃コーチ

最初に高卒2年目の石川昂弥内野手(20=東邦)と中村紀洋打撃コーチの動きが目に入ってきた。

石川昂の顔は生き生きしている。少なくとも私にはそう見えた。中村コーチの言葉に明るくうなずき、石川昂の方から話しかける様子を見ていると、よくかみ合っているなと映る。立浪監督は中村コーチに対し、明確に「石川昂の育成」という使命を与えた。2人の信頼関係は順調に構築されているという印象だ。

活気があるということはいいことだが、中日のように地域色が極めて強い球団は、ともすれば新監督へのご祝儀相場として、過大評価したくなるものだ。そうした側面を割り引いても、打線強化への初手の動きには期待が持てる。そもそもこの段階で空回りは想像はしていなかったが。

屋外でのフリー打撃では左翼へ強烈な当たりを連発していた。上段ネット最上部への打球を見ていると、遠くに飛ばす才能にあふれていることがよくわかる。これだけの打力があれば、広いバンテリンドームでも十分に通用するだろう。

今の練習は、手を前に出して打つことを念頭に置いている。踏み出す左足を目安に、今までより前でミートする。今まではポイントが近く、詰まることがあった。そのポイントをより前に意識付ける段階だ。まず、ストレートを前で捉えることを意味する。

これからスイングを固め、体に染みこませてから来春のキャンプに備えていく。本当に身につくかどうかは、実戦の中で試行錯誤しながら少しずつマスターしていく。飛ばせる才能を伸ばそうという中村コーチの意図を理解した石川昂のスイングには、大きな可能性を感じる。

中日は投手陣が強力だ。投手力があるうちに、なるべく速やかに打線強化への道筋をつけたい。そのためには、ビシエドだけに頼らず、若い右の大砲を鍛えていくのが非常に重要になる。石川昂の成長は、立浪監督の構想の核心といえる。

内野守備では二塁と三塁に入った。おそらくメインは三塁になると予想する。その三塁のレギュラー高橋周は立浪監督、森野コーチがついて指導していた。石川昂の三塁はまだ今後どうなるかわからない。高橋周との競争があるからだ。

チーム力の底上げには、競争が必須。実績でリードする高橋周に石川昂が挑む。長打力の石川昂か、このところアベレージに重点を置きつつある確率の高橋周か。中日の三塁をめぐる争いは、この2人を中心になりそうだ。そして、石川昂が高橋周を二塁に追いやる成長を見せた時に、打線強化への青写真が見えてくる。(日刊スポーツ評論家)(つづく)