将来の日本を背負う若侍がいる。3月に予定されていた強化試合・台湾戦(東京ドーム)は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、23年3月には第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催が見込まれる。侍ジャパンの経験がない12球団の若手有望株にスポットを当てる「未来の侍たち」。第1回は身長2メートルを誇る巨人のメガゴジラ秋広優人内野手(19)。今季から松井秀喜氏の背番号「55」を受け継いだ大器の特大ポテンシャルに迫る。

ノックで笑顔を見せる巨人秋広(22年2月16日撮影)
ノックで笑顔を見せる巨人秋広(22年2月16日撮影)

秋広少年の目に焼き付いている試合がある。原監督が率いた09年WBCの決勝韓国戦。イチローが決勝適時打を放ち、ダルビッシュ有が、空振り三振で締め、世界一になったあの試合。当時7歳だった。「イチローさんがセンター前のシーンとか、ダルビッシュさんの三振のシーンとか。リプレーで何度も映像が流れてきますし、印象に残っています」と脳裏に刻まれた。

そこから11年。ドラフト5位で巨人に入団も、エリート街道を歩んできたわけではない。地道にはい上がってきた。中学時代に所属した江戸川ボーイズは同学年がわずか7人だった。二松学舎大付(東東京)でも甲子園の出場経験はなく、年代別の代表経験もない。潜在能力が高い長身選手として注目されても、日の丸を背負うことは想像もしない、別世界のことだった。

阿部作戦兼ディフェンスチーフコーチ(右)の前で、険しい表情で関節を伸ばしながらトス打撃に臨む巨人秋広(撮影・河田真司)
阿部作戦兼ディフェンスチーフコーチ(右)の前で、険しい表情で関節を伸ばしながらトス打撃に臨む巨人秋広(撮影・河田真司)

プロ入り後は住む世界が変わった。チームメートに坂本、菅野、丸、中田、小林、岡本和ら侍ジャパン経験者がズラリ。ルーキーイヤー中に迎えた東京オリンピック(五輪)では、これまでと目線が変わった。「やっぱり違う。同じチームの先輩もいますし、高校の時とか、小さい頃に世界大会を見た時とは少し思いが違う。勉強というか、見方が少し変わった。外国人の投手に対して対応力がすごかった」と成長の材料と捉えた。

昨季は1軍出場はわずか1打席(結果は凡退)のみ。まずはチームで初安打、初打点、初本塁打を挙げることに集中する。国際舞台へのイメージは「まだないです」ときっぱりと言うが、3学年上のヤクルト村上は東京五輪で堂々と活躍した。「年も数個しか離れてないのに、日の丸を背負って活躍するのは、すごいと思います。まだ自分もというところまで行ってないんですけど、いずれは、とは思います」と思いをにじませた。身長2メートルの体に秘めた特大のポテンシャルを、世界に見せつける。【小早川宗一郎】

巨人秋広の年度別成績
巨人秋広の年度別成績