高校、大学、そしてこれからも、注目を集める選手人生を歩む。早大・中川卓也内野手(4年)は、大阪桐蔭で主将として春夏連覇を達成。戦う集団の先頭に立って、駆け抜けてきた。大学でも昨秋、小宮山悟監督(57)に自ら志願して主将に。「予想以上にしんどかったし、予想以上に悩みました。でも1人の野球人として、人間として、本当に成長させてもらった1年間でした」。

大きな壁にぶつかった。今春リーグ戦は、わずか3勝のみ。勝ち点1で5位に終わった。全く違う環境で野球をやってきた約150人の部員をどうまとめ、1つの方向に向かうか。温度差が難しかった。「勝ちたい、日本一になりたいという思いは全員持っているけど、アプローチの仕方が定まっていないというか。チグハグになってしまった」と明かす。

それまで、主将とは「強いこと、厳しいことも言って、みんなを鼓舞して引っ張っていくもの」と思っていた。しかしそれだけでは、まとめられない現実。まずは自分から変わろうと、耳を傾ける主将になった。「こうやった方がもっと良くなるんじゃない?」。口調や、言葉を変えてみた。「話し方1つで選手は変わるし、モチベーションも上がるかなと。言葉選びは、時期や人で考えました」。温度差は徐々に少なくなったと感じた。春は2連敗だった早慶戦。今秋は、優勝に王手をかけた慶大相手に2連勝。「春は手も足も出なかったけど、秋に2連勝で終われたのは、野球人生において財産になる」。

自分のことを「下手くそ」と表現する。1年春にリーグ戦デビューし、47打数6安打で打率1割2分8厘。ドラフト候補に挙げられた今年も、打撃に苦しんだ。今秋は34打数4安打の打率1割1分8厘。プロ志望届を提出したが「覚悟はしていた」と指名漏れ。「結果も残せてないので、達成感はない」と言う。

コロナ禍前の満員の早慶戦を知る最後の世代。1年生の19年秋、1勝1敗で迎えた早慶戦。サヨナラ勝ちの瞬間を二塁ランナーとして迎え、神宮球場の地鳴りを聞いた。次は、東京ガスの一員として都市対抗や日本選手権が大舞台になる。「社会人野球の魅力、良さを勉強させてもらいたい。野球をやっている以上はプロ野球選手を目指します。会社員になるので、社会人としても、野球以外の面でも成長していけたら」。プレッシャーを、力に変えていく。【保坂恭子】

◆中川卓也(なかがわ・たくや)2000年(平12)7月28日生まれ、大阪市出身。4歳から野球を始め、北出戸モンスターズから大阪福島シニアを経て大阪桐蔭。甲子園4度出場で3回優勝。3年春夏は連覇。早大では1年春にリーグ戦デビュー。通算74試合出場、打率2割1分1厘。50メートル6・5秒。遠投105メートル。175センチ、81キロ。右投げ左打ち。