6月25日、興味深いニュースが飛び込んできた。日本学生野球協会が、日本高野連が申請したプロアマ共催による「合同練習会」の実施を承認したという。プロを目指す高校3年生救済へ、日本野球機構(NPB)と日本高野連がタッグを組んで、8~9月の週末に合同トライアウトを行うというのだ。

このニュースに18年前、2002年7月に米国で見た「ショーケース」を思い出した。

18年前の夏、スポーツライターの小関順二さんと米国を旅した。メジャーリーグ、マイナーリーグ、ケープコッドリーグなどの大学生のサマーリーグ、高校野球を見て回った。その中でも印象に残ったのが、ジョージア州アトランタ郊外のマリエッタで行われた「米国版夏の甲子園」だった。大会名は「パーフェクトゲーム・チャンピオンシップ」。いわゆる高校生を対象にした「ショーケース」(品評会)と呼ばれるトライアウトだった。

この大会には全米から40チームが参加。高校単位ではなく各州の選抜チームなどがほとんど。選手は全員が卒業後、プロや大学でのプレーを目指すエリート軍団である。広大な敷地にある3面のグラウンドを舞台に、リーグ戦を勝ち抜いた16チームが決勝トーナメントに進む。

この大会を主催したのが「パーフェクトゲーム」という会社。メジャーの球団にアマ選手のスカウティングリポートを提供している。のべ300人以上のMLBスカウト、大学の監督、コーチ、さらに有望選手との契約を狙う代理人が連日、会場に押し寄せていた。

彼らは当時で100ドル(約1万1000円)を支払い、大会のプログラム、参加選手の詳細な資料が付いた名簿などを入手。一方で選手はチーム単位で1000ドル(約11万円)程度を参加料として支払う。

スカウトが手にしていた選手の資料を見て驚いた。生年月日、身長、体重、さらに学校の成績、自宅の住所、電話番号、両親の名前まで細かなデータが掲載されているのだ。学校の成績は奨学金を出す大学の監督らが目安にするため。自宅の電話番号や両親の名前はプロのスカウトがすぐに交渉できるよう載せてあるという。

同社のスタッフを取材すると「ここはスカウトにとっては天国のような場所。車であっちこっち回らなくても、ここに来れば一度に有望な高校生をすべて見ることができるんですから」という。普段は金属バットを使う選手もここではスカウトに見てもらうのが目的だからすべて木製。投手の約8割が90マイル(約145キロ)以上の速球を投げる。この時の大会最速は98マイル(約158キロ)だった。

米国ではこのような「ショーケース」が全米各地で行われ、プロや大学でのプレーを目指す高校生が参加しているという。確かにプロ、選手の双方にメリットがあり、いずれ日本でも開催されるのではと思っていた。

あれから18年。新型コロナウイルス感染拡大がきっかけとはなったが、日本で初めての大々的な「ショーケース」が実現することになった。当時見た米国の高校生の目はギラついていた。プレーからは甲子園を目指す日本の高校球児となんら変わらぬ必死さが伝わってきた。

「合同練習会」には8月21日までにプロ志望届を提出すれば参加できる。会場を東西に分け2回(参加者多数の場合は3回)。練習メニューはNPB側で組むが紅白戦やシート打撃が行われる可能性もある。無名選手でもスカウトの目に留まれば10月26日のドラフト会議で指名を受ける。甲子園大会はなくなったが、この夏はプロ野球を目指す熱い戦いに注目が集まりそうだ。【デジタル編集部 福田豊】