<セCSファイナルステージ:広島5-1巨人>◇第3戦◇19日◇マツダスタジアム

いい光景だった。広島と巨人。戦いが終わり、セレモニーが始まる前。巨人監督・高橋由伸は広島監督・緒方孝市に歩み寄った。握手をし、恐れ入りましたという表情の由伸を緒方はねぎらった。

阪神が優勝した03年。闘将・星野仙一は最後の巨人戦で辞任が決まっていた敵将・原辰徳を抱き寄せた。「絶対、負けるなよ!」とゲキを飛ばした名場面を思い出した。

「いや。普通にご苦労さんでした、と言ったぐらいですよ」。緒方は笑ったが全力で戦った男たちの節目の姿は、やはり、よかった。

この敗戦で巨人のユニホームを脱ぐ由伸もサバサバしていた。18日の第2戦前に少しだけ話した。第1戦が広島の完勝だっただけに「完全に広島の形になってしまったね」と声を掛けた。

「ここに来るといつもこんな感じになってしまうんですよね…」。そう首をかしげながら、少し寂しそうな顔で話した。マツダスタジアムで戦う敵将の偽らざる心境だろう。

高橋の巨人監督在任期間は3年だった。阪神監督を辞任した金本知憲と同じだ。そして、この3年間、優勝はすべて広島だった。まさに広島の前に砕け散った2人の指揮官と言える。

高橋をねぎらった以上に金本への気持ちが緒方にはあるだろう。同じ広島の外野手、中心選手として活躍。今年50歳の同学年でもある。だが金本の辞任についてこれまで緒方の談話はなかった。だが聞いておきたい。そんな話をすると緒方は言った。

「う~ん。報道ではいろいろとあるみたいですけど。阪神の内部のことは分からないんでなんとも言えない。まあカネ(金本)には3年ではなく、もう少しやってほしかったとは思いますけどね…。でも阪神は次の監督もまた同学年なんですよ」

「次」とは、もちろん矢野燿大のことだ。矢野も今年12月に50歳を迎える。その矢野について緒方が言ったことが印象的だった。

「でも変わるよ。阪神は。捕手だった人間が監督になったら絶対、変わるから。ウチも気をつけないかんよ」

今季、セ・リーグの監督は外野手出身が5人(広島、ヤクルト、巨人、DeNA、阪神)、投手出身が1人(中日)だった。金本、高橋の辞任で外野手出身が2人減った。代わりに内野手(巨人原)、そして捕手出身の矢野が加わる。

元監督・野村克也の例を持ち出すまでもなく現役時代から指揮官に近いのが捕手だろう。そのキャリアをどう生かすか。矢野にとっても同学年・緒方への挑戦が始まる。(敬称略)