小学校で同級生だった友人はこちらと違って優秀で人間的にもいい男。有名高校、有名大学から誰もが知る企業に就職しました。彼には大学時代から交際していた女性がいました。大学は別でしたが、なんと、同じ企業に就職したのです。

その企業は大阪本社。彼も大阪で勤務していました。そして2人は結婚。共働きをしていましたが数年後、彼が東京転勤となりました。「どうするん?」と聞く私に、彼は「ヨメさんも東京勤務になるよ」。

今ではそういう制度を取っている会社は大手を中心に少なくないようですが、約30年前のそのときはこちらは初めて聞く話。「やっぱり大企業は違うなあ」と思ったものです。

そんなことを思い出したのは阪神と巨人の間で成立した金銭トレードに接したからです。すでにご承知のように山本泰寛内野手が巨人から阪神に移籍することが決まりました。

その対決が「伝統の一戦」とされる両球団の間ではトレードがほとんどありません。別の記事にしっかりと表が掲載されていますが、ほとんどの読者が記憶しているのは「江川卓-小林繁」のトレードでしょう。

あれは背景から見てもいわゆる「交換トレード」と言えるものではないように受けとっていますし、TG間でのトレードはきわめてめずらしい。交換トレードという形では30年近く実現していません。今回も巨人が事実上、構想外の方向にしていた山本に阪神側が興味を示し、獲得したという形のようです。

しかし、もう1つ、野球に興味のない方でも「ふ~ん」と思う要素がありました。山本の結婚についてです。山本は今年、MBS(毎日放送=大阪市)の辻沙穂里アナウンサーと結婚。辻アナは妊娠中で、来春には第1子の誕生が予定されているといいます。

この話題が出たとき素朴に「辻アナはどうされるのかな」と思いました。山本選手と辻アナはともに東京出身で慶応大卒。一般的に夫婦、幼子で暮らそうとすれば…。

別居か。あるいはMBSを退社するのか。または東京支社に転勤か。大きなお世話ですが、こちらも同年代の娘を持つ身として、どうするのかな? と少し考えていました。

念のために同局の関係者に聞けば「現時点で辻が辞めるという話はありませんし、これまでも出ていません」とのことでした。

そんなときにダンナさんの方がまさかの“関西転勤”ではない阪神入り。もちろん個人の事情はいろいろあるでしょうが、少なくとも、これで辻アナは現状のままでともに暮らせる形にはなったということです。

ひょっとして球界全体でプライベートに都合のいい場所で働けるよう「ワーク・ライフ・バランス」を考えているのか。まさかそんなことはないでしょうが、今回に限れば、そうなったということでしょう。

もちろん虎党に重要なのは山本が阪神で戦力になれるかどうか、です。タイプ的には熊谷、植田あたりとかぶるのでしょうか。そう考えれば、正直、似たタイプが多いなという気もしますが、ここはひとつ、ユニークなトレードを成功させて両球団に「恩返し」の働きをしてほしいものです。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)