<イースタンリーグ:西武5-9巨人>◇15日◇カーミニーク

ファームに特化して、2軍選手の現状をリポートしている田村藤夫氏(62)は、西武の20年ドラフト3位で高卒2年目の山村崇嘉内野手(19=東海大相模)に注目した。

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試合を通じて感じるのは、山村への期待と、備えの大切さ、この2点に尽きる。くしくも巨人では、広岡と死球から復帰を期す吉川が躍動していた。二塁で出場していた山村にとって同じ二塁の吉川の動きも、二遊間を守る広岡の動きも参考になったはずだ。見てなにかを感じなければ、プロとして大きなチャンスをふいにすることになる。

山村は2回1死一、二塁でミスをしている。三ゴロで二塁に入り送球を受け一塁へ転送したが、右翼側へそれ、そしてワンバウンドになって併殺を逃した。タイミングとしては際どかった。ノーバウンド送球で正確に投げていたとしても、アウトになったかどうか、ギリギリだった。

ただし、セカンドの動きとしては非常に基本的な動きだった。三ゴロを確認して二塁に入り、正面で送球を受け、一塁へ転送する。一塁走者の走路と送球のラインがかぶった可能性はあるかもしれないが、ここは正確にノーバウンドで送球すべき状況だった。

山村としては、ノーミスで正確に投げ、その結果としてアウト、セーフの判定を待つ、これが最低限の仕事だった。ここでワンバウンドにしていては、話にならないと感じた。非常に厳しい表現になるが、いかにファームといえども、それがフェアな評価となる。

この後、ウィーラーの右前打に、山村は必死に飛び込む。わずかに届かずヒットになるが、連打を許して4失点となった。三ゴロで併殺を狙った送球次第で試合展開は一瞬にして変わってしまう。直後、同じ高卒2年目でマウンドの豆田の元へ行って言葉をかけていたが、もったいない失点になってしまった。

ミスは必ず起きるもので、それをことさらに大げさに取り上げるやり方は好きではない。やはり、どこにその原因があったのかを、見る側としても分析しながら考えるべきだろう。この送球ミスは、技術的なものというよりは、気持ちの面での準備不足だったように感じる。体の動きとしてはイージー。だからこその、細心の注意、集中力で臨むべき場面だった。

この試合で広岡は第3打席で内野フライを打ち上げている。14日の中日戦では二塁で先発出場しながら、人工芝に足を取られて送球できず、ヒットを許している。直後に交代してベンチに下がり、そして翌日の2軍戦で試合に出場していた。内野フライを打ち上げた瞬間、広岡はミスショットに悔しい感情を動きに見せたが、すぐに思い直したように一塁へ全力疾走した。

中日戦でミスをしたことは取り消せない。もちろん、落胆もあるだろうし、それ以上に悔しさがあると想像できる。その思いが、この内野フライ直後の全力疾走に出ていたと、私は感じた。何とかして現状を打開したい。自分に求められているものを必死に表現したい。その強固な自分への戒めが、全力疾走をさせているのだろうと、ひしひしと伝わってきた。

そういうシーンがこの試合にあったからこそ、余計に山村へのプレーにもどかしさを感じた。その後、山村は二-遊-一、遊-二-一と2度併殺を完成させている。一方、6回には二ゴロを捕球しながら二塁へ暴投して失点につながっている。何とか取り戻そうという気持ちはあるのだろうが、まだまだ見ているこちらにその懸命さは伝わってこなかった。

伝わるか、伝わらないかはこちらの主観による。その主観を元に評価するのはフェアではないという見方もあるだろうが、プロ野球はファンに見せて成立する。やはり、見ているファンに、プレーする選手の思いが伝わる方が望ましいと感じる。

西武1軍では、育成から支配下昇格を勝ち取った高卒ルーキー滝沢夏央内野手(18)が、2日連続のお立ち台で一躍脚光を浴びている。山村も当然、燃えているだろう。チャンスをつかむためには、準備をすること。これに尽きる。

この試合で吉川は遊ゴロに対して一塁ベースのバックアップに全力で入っていた。1軍のレギュラークラスのこうした光景は山村にも届いているか。広岡も吉川も攻守交代では素早く守備位置について準備している。これも同じく山村がぜひ学んでもらいたいポイントだ。

高卒2年目。私の指摘したポイントはまだギリギリ徹底してもらいたい部分だと言えるが、この先はもう誰も言わなくなるだろう。後から後から若手がチャンスをつかもうとはい上がろうとしている。その波の中で自分の存在を示し続けるのは、並大抵のことではない。(日刊スポーツ評論家)