<イースタン春季教育リーグ:DeNA1-1西武>◇14日◇横須賀

DeNAの高卒ドラフト1位・松尾汐恩捕手(18=大阪桐蔭)は2番DHでスタメン出場。4打数1安打1犠打。第4打席は同期の西武ドラフト5位・山田陽翔投手(18=近江)と対戦した。


ファームで実戦に出始めた松尾がどんなプレーをするのかを楽しみに、横須賀に足を運んだ。DHでの出場だったが、バッティングに絞ってじっくり見ていると、幸運なことに西武も高卒ルーキー山田が登板。同期対決を見ることができた。

マウンドの山田と打席の松尾をスマホで写真に収め、2人の勝負をじっくり見届けようと思っていると、初球で決着がついてしまった。もうちょっと2人の対戦を見たかったのが、正直なところだが、その初球をしっかり見ることができたのは良かった。

143~144キロのストレートだった。内角高め。コースはギリギリとまではいかないが、まずまず厳しいストライクゾーンへのボールだった。高めだったので、松尾もとっさにバットが出た印象を受けた。スタンドから見ていた限りでは、高さはちょっと危ないかな、というレベルだった。

もちろん、マウンド上の山田が松尾に対してライバル心を見せていたわけではなく、松尾も同様に自分のバッティングに集中している様子だった。それでも、甲子園で下関国際と激闘を演じた大阪桐蔭の松尾を記者席から見て非常に印象に残っている。そして、高松商の浅野との対決でスタンドをわかせた山田のマウンド姿も、忘れることができないひとこまだった。この2人の対戦は、見ているこちらを熱い気持ちにさせてくれた。

ここから、2人はファームでも何度か対戦しながら、それぞれのリーグで1軍昇格を目指すだろう。春先の教育リーグで、2人のプロ生活スタートを刻むかのような1打席は、感慨深いものがあった。山田は2回を1安打2四球無失点。最速147キロで、ツーシームもカットボールも良かった。力のあるボールを投げていた。

松尾に目を移すと、第1打席は追い込まれてから外へのスライダーをいい当たりの左飛。風が左翼から右翼に吹いていたことから、少し戻されたように見えた。風が味方していれば左中間を破っていてもおかしくない打球だった。

第2打席は外角高めのまっすぐをライナーで一、二塁間を抜く右前打。第3打席は初球インコースの甘めカーブを左飛。これも悪くない当たりだった。第4打席は山田との対戦で左飛。第5打席は初球できっちり送りバントを決めた。

凡退した打席を含めて内容は良かった。全体を通して松尾のバッティングは超積極的に感じた。特に球種を問わずに甘いボールにはスイングしていくところがいい。第3打席のような初球カーブに対し、甘いと判断してスムーズにバットを出していたが、こういう積極性は光る。

バッターは基本的には追い込まれるまではまっすぐを待つ傾向が強い。試合展開、状況にもよるが、初球カーブにパッと反応して打てるのは、ひとつの特長と感じた。対応力というのは、訓練で培う部分と、もともと備わっているものがある。松尾のこうした柔軟さは、これからどんどん経験を重ね、磨いて磨いて武器にしてほしい。

捕手松尾に注目しているだけに、捕手での基本動作などを今後も注目していきたい。この日の試合では西武は5回盗塁(1盗塁死)を仕かけてきた。たとえば、このことからもベンチの松尾が学べることはある。西武がどんどん走ってくることを念頭に置いていれば、仮に同一カードでの連戦だった時、西武の走者のスタートを切るタイミングがヒントになる。

同じように、好調な打者への配球を頭に入れておけば、自分がマスクをかぶった時に比較材料になる。捕手は試合に出て学ぶこともあるが、ベンチにいても見て覚える、見て学ぶことはいくらでもある。松尾がどういう意識で試合を見ているか。意識が高ければ、そうした習慣はいずれ松尾自身を助ける情報の蓄積になる。

ちまたでは進学する学生は大学生として、就職する人は社会人として、新生活への準備期間に入っている。松尾と山田は、プロ野球という社会で既に新しい生活に入っている。うまくいかないことは必ず出てくるが、同期が必死にプレーする姿こそ、何よりの励みになる。

また次の機会で、山田と松尾が対戦する時、どんなボールでどんな決着がつくのだろうか。成長した2人が全力でぶつかる姿が楽しみだ。それが1軍の交流戦であれば最高だが、たくましくなった2人が、ファームでぶつかるところもまた見たい。(日刊スポーツ評論家)

西武山田陽翔(2023年1月26日撮影)
西武山田陽翔(2023年1月26日撮影)