<全国高校野球選手権:履正社5-3星稜>◇22日◇決勝

星稜(石川)の最速158キロ右腕、奥川恭伸投手(3年)が力尽きた。令和初の全国制覇、県勢初の大旗を期待されたが、履正社(大阪)の4番井上広大外野手(3年)に3ランを浴びるなど、春に完封していた相手打線に5失点とリベンジを許した。

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奥川の着実な成長ぶりを喜ぶスカウトの声をよく聞く。高校入学時から好素材と言われていたが、少し伸び悩めば平均的な投手になる可能性もあった。

身体能力はどれも平均的で、本人は「突出したものが見当たらない」と苦笑いする。小学校の宇ノ気ブルーサンダーでは今の女房役の山瀬と同格の投手。球速も抜きつ抜かれつ。才能が花開き始めたのは宇ノ気中に入ってから。それも「なぜだか分からない」。

ただ、小さい頃から探求心が旺盛だった。野球のテレビゲームをやるときは「使いやすい投手」に魅了された。例えば西武の涌井(現ロッテ)。直球のラインがきれいで、制球もしやすい。理想の投手のイメージが自然とできた。

動画を見るのが好きで、他の投手に比べてリリースの瞬間に「指が伸びている」と分析。球をひっかくイメージを描き、指立て伏せなどで指先を強化。苦手なフォークをものにした。探求心と、実行力。そして継続する力。小さな積み重ねで成長してきた。決勝で敗れ「まだまだやることがある」と言った右腕はまだまだ伸びしろを持っている。【柏原誠】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

履正社対星稜 1回表を無失点に抑えタッチを交わす星稜・奥川(左)と山瀬(撮影・横山健太)
履正社対星稜 1回表を無失点に抑えタッチを交わす星稜・奥川(左)と山瀬(撮影・横山健太)