今年もプロ野球が開幕した中、新しくスタートを切ったチームがある。佐賀インドネシアドリームズ。独立リーグの九州アジアリーグに、今季から準加盟した。

日本の野球史において、画期的なチームと言っていい。名前が示すとおり、選手はインドネシア人選手が中心で多くが同国の代表経験者だ。さらに、フィリピン、シンガポール、スリランカ、日本の選手も加わる。まさに多国籍軍団が佐賀で活動を開始した。

率いるのは、元ロッテ投手の香月良仁監督(40)。実兄の良太氏(41)がコーチとしてサポートする。

香月監督は16年限りでロッテ退団後、社会人チームでのプレーやGM補佐などを経て、自らの会社を興した。社会人時代を過ごした熊本を拠点に、地域おこし事業や野球教室などを展開。そして、独立リーグとはいえ、ついにプロ野球の監督となった。

さまざまな経験を積んできた香月監督にとって、インドネシアドリームズを率いるのは新たなチャレンジとなる。3月後半に選手たちが来日。異国での生活面のサポートもあり、おそらく本来の監督の域を超える忙しさだろうが「みんな明るいです。純粋ですね」と、香月監督の声も明るい。

野球の原点に立ち返っているという。「日本だと、例えば『こう打ちなさい』という教えがあって。それ以外の打ち方をすると、選手がダメにさせられたり。でも、彼らはとにかく思い切り振って、当てる。それでOKって考え方なんです」。野球本来の楽しさを気付かされた。

言葉の壁は高くない。香月監督が日本語で言ったことを、日本語が分かるインドネシア人選手が仲間に訳す。さらに、インドネシア語が分かるスリランカ人選手が、他のスリランカ人選手に訳す。そうやって助け合いながら、文字どおりチーム一丸で練習を重ねている。「宗教も言葉も違うけど、野球をやることは変わりません」と香月監督。時に翻訳アプリも駆使。「案外、どうとでもなりますよ」と頼もしい。

アジアの野球は、日本、台湾、韓国のトップ3ないし、中国を加えたトップ4と、他国の差はまだまだ大きいのが現実。近い将来、インドネシアドリームズから、たとえ育成であってもNPBに入る選手が出てくれば-。

東南アジア、西アジアでプレーする選手の“夢”を冠した新チームは4月13日、佐賀・武雄のひぜしんスタジアムで宮崎サンシャインズとの開幕戦に挑む。【古川真弥】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

ミーティングを行う佐賀インドネシアドリームズのメンバーと香月監督(右手前から2人目=香月氏提供)
ミーティングを行う佐賀インドネシアドリームズのメンバーと香月監督(右手前から2人目=香月氏提供)
練習を行う佐賀インドネシアドリームズのメンバー(香月氏提供)
練習を行う佐賀インドネシアドリームズのメンバー(香月氏提供)