阪神対広島 8回裏阪神無死、中前打を放つ高山俊(撮影・清水貴仁)
阪神対広島 8回裏阪神無死、中前打を放つ高山俊(撮影・清水貴仁)

平成ラスト。高山俊のいい姿を見た気がする。試合途中、左翼の守備から出場していた高山。8回、先頭打者の形で打席に入った。ここで中前打を放って出塁。続く近本光司の打球は詰まったようなゴロで一、二塁間を抜けた。ここで高山は猛然と走る。そのまま三塁へスライディング。無死一、三塁の形を作った。

皆無だったとまでは言わないが、これまでの高山にはないような激しい走りっぷりだったと感じた。三塁ベースコーチの藤本敦士に聞いてみる。あそこはかなり必死で走っていたように見えたが?

「そうですね。右翼が(強肩の)鈴木誠也でしたしね。それにそんなに深く守っていなかったですから。ああいう打球で抜けていくこともあると覚えていてほしいですね」。グルグルと手を回した藤本もそう振り返った。

言うまでもなく高山は明大で131安打のリーグ記録をつくり、ドラフト1位で入団してきた男だ。その勢いのまま16年に新人王を獲得した。8本塁打含む136安打は立派な成績だった。だがその頃から指摘されていたのは守備、それに走塁面だ。

「そういうことにあまり興味がないんでしょう」。そんな話を周囲から聞いた。打撃で生きていこうと思っていただろうし、1年目はかなりのレベルでそれができた。しかしプロは甘くない。2年目にパワーアップを目指したこともあってか調子を乱し、結果的に復調できず、現在に至っているといっていい。

今季も開幕は1軍で迎えたが4月4日に早々と登録抹消された。しかしファームでもくさらず、打撃だけでなく、守備も走塁もしっかり練習してきた。再登録となったこの日、いきなりそれを証明するようなランだった。常にこんな全力プレーができれば、1年目の輝きを取り戻すことも夢ではない。そう思う。

「間に合ったな。平成の最後に」。阪神勝利後、ロッカールームを出てきた高山にそう声を掛けてみた。「まあ、そういうことですね」。いつものニヒルな調子で彼は言った。この中前打が高山にとって今季初安打だった。

時代は令和に変わった。ベテランと若手の二極化が著しい阪神で、高山は令和時代の外野レギュラー候補の1人だ。しっかり打って、守って、走れればその最短距離にいると言ってもいいはずだ。

試合後、指揮官・矢野燿大は令和最初のゲーム、1日の広島5回戦で高山のスタメン起用を明らかにした。ここで周囲を納得させる結果を出せるかどうか。新時代の主力へ向け、まずはポイントだ。(敬称略)

阪神対広島 試合後バックスクリーンには「ありがとう平成」のメッセージが表示された(撮影・上田博志)
阪神対広島 試合後バックスクリーンには「ありがとう平成」のメッセージが表示された(撮影・上田博志)