外国人選手、特に米国経験のある選手に関してはかねて不思議というか面白いな、と思っていることがある。打者が死球を受けたり、投手に球が当たったりしたとき、痛がる様子をなるだけ見せないようにする、ということだ。コーチが駆け寄ったりすると「うるさい!」とばかりに追い返すポーズを見せることも。

いわゆる“マッチョ”を強調しているのだろうか。そうかと思えば準備段階ではかなり繊細な印象だ。球数制限を含め、コンディションをケアする現代野球の流れはほとんどが米国生まれだろう。そんな合理的な面が多いのに、いざグラウンドに立つと妙にタフさを示そうとするところが面白いと思っている。

広島でエースになり、ヤンキースなどで活躍した日米のレジェンド・黒田博樹に以前、聞いた話がある。黒田は打球に手や足を出すので有名な投手だった。ケガの可能性もあるし、危ないのでは? と聞いたときに「そうなんですけど本能というか自然に出てしまうんですわ」と答えた。そんな姿勢は米国でも人気を呼んだものだ。

そんなところから考え合わせ、米国では「戦う姿勢」をアピールするのが何より重要なのかと思っている。実際、打たれた投手がベンチに戻った後、グラブをたたきつけたり、イスを蹴ったりして、悔しそうな様子を見せる姿を見せることも必要らしい。

米国でマイナーリーガーだったガンケルが今季3勝目をマーク。その序盤、そういう風土に関係があるのかもというプレーが出た。2点を先制してもらった1回、2死一塁から佐野恵太の打球は投手返し。ガンケルの右足付近を襲った。

サッカーばりに意識して蹴ろうと思ったのか。あるいは避けるヒマがなかったのか。その辺りは微妙だが、とにかくこれを右足スパイクのかかと部分に当てた。これがうまく三塁前に転がり、三ゴロ。危機を脱した。このプレーも影響して阪神は接戦を取った。

正直、うまい試合運びではなかったと思う。2桁安打を放ったが得点は3点にとどまり、適時打はルーキー中野拓夢の1本だけ。それでも先発投手がしっかりと投げ、必勝リレーもかろうじて踏ん張っての守り勝ち。長いシーズン、こんな白星はなかなか重要だ。5球団ひと周りで「貯金7」。これで甲子園で広島との“首位攻防戦”にスムーズに入っていける。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

3回裏DeNA2死、ガンケルは桑原の打球を好捕した糸原に向けてサムアップ(撮影・加藤哉)
3回裏DeNA2死、ガンケルは桑原の打球を好捕した糸原に向けてサムアップ(撮影・加藤哉)
4回表阪神1死一塁、ガンケルは捕前犠打を決める(撮影・加藤哉)
4回表阪神1死一塁、ガンケルは捕前犠打を決める(撮影・加藤哉)