ちょっと勝ち過ぎちゃうか。練習やのに。そんな印象を受けてしまう。東京オリンピックの陰に隠れ、さほど注目されていないエキシビションマッチだがロッテ、西武との6連戦で5勝1敗。前半戦序盤の勢いを思い出させるような勝ちっぷりだ。

何より条件反射的に気持ちよくなってしまうのはここまでの6試合、すべて甲子園でのゲームだったということだ。「甲子園では勝たなあかんやろ! ファンに『六甲おろし』歌わせたらなあかん!」。03年の虎番キャップ時代、闘将・星野仙一から聞かされたことを思い出す。

そんな情緒的な話でなくとも本拠地で勝てずに優勝することは難しいだろう。貯金15で終えた前半戦の84試合、あらためて甲子園での戦績を振り返ってみると「おや」と思ってしまう。

19勝19敗2分け。まったくの5割だ。京セラドーム大阪の1カードで2勝1敗と勝ち越しており、ホームでの貯金は「1」。比較してビジターでは27勝13敗1分けと貯金14もある。

関西の球団ながら全国的人気を誇る阪神、敵地で白星を重ねるのはいいけれど地元で勝てればもっと貯金が増えていたのにと思ってしまう。勝負に“たられば”はないけれど。

カタカナになじんでいる現代風に言わせてもらえば甲子園は“タフ”な球場だろう。広いし、浜風などの自然現象、さらに土のグラウンドの影響も受ける。そういう球場では、チームや選手個人の地力がハッキリ出ると思っている。

だからこそ歓喜の秋を迎えるためには甲子園でしっかり勝ち越すのがテーマではないか。そのためには、やはり攻守に細かいプレーが大事になってくる。誰でも感じることだろう。

指揮官・矢野燿大も重々、承知している。5回に見せた重盗はよかった。1回に敵失でつくった好機で反対方向に軽く打った糸井嘉男もベテランらしかったし、6回、坂本誠志郎にしっかりと犠打を命じたのもベンチの意図が感じられた。

佐藤輝明の加入で打力がアップしたイメージの阪神だがチーム打率はリーグ5位、本塁打数もリーグ4位だ。いつもいつも打ち勝てるはずはない。だからこそベンチの策が重要になってくる。タフな本拠地を高校野球に明け渡し、次に甲子園に戻ってくるのは今月31日、後半戦6カード目、中日戦だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)