あっさりだ。今季最多の4万2483観衆をのみ込んだ甲子園で阪神はヤクルトを上回る6安打を放ちながら小川泰弘の前に完封負け。「短いな」と思った試合時間2時間24分は4月10日の広島戦(甲子園)と並んで最短タイ。よくピッタリいっしょになったなと思うが、その試合もガンケルがマクブルームに許した1発だけで負けているので、低迷する今季を象徴するようなゲームかもしれない。

クリーンアップが無安打だったのはいただけなかったし、何より飛球をポンポン打ち上げるのは困ったもの。長打力のある打者が少ないのだから野手の足元を狙って打ち返す打撃を期待するのだが内外野に打ち上げた飛球は計14個。見ていて面白くない。

とはいえ。ここはマジシャン仰木彬の名言を思い出すところだろう。近鉄、オリックスで指揮を執り、野茂英雄、イチローを育てた名監督の口癖は有名なアレだ。「野球は負けたり、勝ったり」である。

開幕9連敗を喫し、どうなることかと思った今季。あっという間に借金はワーストの「16」にまで膨れ上がり虎党もメディアも大騒ぎする異常事態に陥っていたのはほんの少し前だ。

もちろんリーグ最下位、低迷は続いているのだが、なんとか雰囲気が落ち着いてきたのは今月1日までの6連勝によってだ。ようやく“1勝2敗”ペースに戻し、ここから巻き返しという気配もほんの少しだけ出てきた。

そこで大型連休、地元・甲子園と巡ってきた。さらにいくで-という期待も高まるのだが、そうは続かない。西勇輝は踏ん張ったが1回の被弾は痛かった。それでも4月5日のDeNA完封劇で泥沼の連敗を止めたのは西勇だったし、連勝を止めることもある。

こわいのは反動で連敗することだろう。連敗、連勝の繰り返しになるのが恐ろしい。もちろん連敗した数だけ連勝できるのなら、なんとかなるが、そうはうまくいかない。借金は2桁の「11」もあるのだから。

だからこそ大事なのは4日ヤクルト戦だ。ここを取れれば、また落ち着く。反対に連敗するようなら、またしてもいやなムードに支配されて「大型連泣」という見出しになってしまう。

「明日、明後日ね、喜んで帰ってもらえるように頑張ります」。指揮官・矢野燿大はそう言ったけれど、本当にここで踏ん張ることが明日につながる。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)