大山悠輔が9回2死から放った起死回生の同点2ランもつかの間。延長12回、中野拓夢の失策で出した走者から一気に4失点を重ね、阪神は力尽きた。疲労の蓄積する敗戦だ。

エース青柳晃洋が力投して主軸に貴重な1発が出た。それでも勝てない。どうすればいいのか。そんな思いが募る敗戦である。それでも、やはり、苦境脱出のカギは盗塁を含めた積極性にあると思ってしまう。

ここまで45試合。阪神の選手に本塁打が出た試合はこれで10勝11敗1分けの「借金1」。反対に本塁打の出ていない試合は5勝18敗の「借金13」だ。チーム勝率と比べれば、やはり本塁打の力は大きいということが分かってくる。

それと似たような事項がある。それは盗塁だ。ここまで45試合、盗塁を決めた試合はこの敗戦で9勝10敗となった。本塁打の出た試合と同じく「借金1」だ。そして盗塁しなかった試合の結果は6勝19敗1分けで、これも「借金13」。

1発の出た試合と盗塁を決めた試合の結果はとてもよく似ている。内容にもよるが数字だけ見ても盗塁の効き目はムードの盛り上がりも含め、本塁打と同等のものがあると感じるのだ。

とにかく併殺が目立った試合だ。1回、無死一塁。2回、1死一塁。そして7回の1死一塁と3度も併殺打が出た。2回の走者は大山だったが1回は近本、7回は佐藤輝明と盗塁を狙えるチャンスはあったと思う。この日に記録された盗塁は6回、高山俊が決めたもの。だが、これは1死一塁から近本光司が粘り、フルカウントになってからの“自動スタート”のような感じで、攻めた盗塁ではなかった。

指揮官・矢野燿大の「オレたちの野球」は元々「超積極野球」だ。阪神2軍監督としてファーム日本一に輝いた18年。ウエスタン・リーグ新記録となるシーズン163個の盗塁を決め、矢野は手応えを感じた。翌年、1軍監督に就任してからもその考えを持ち込んだ。もちろん盗塁を含めた先の塁を狙っていく姿勢という意味である。

そして4年目の今、最下位にあえぐ。得点できない現状が続き、リスクの大きい盗塁はもちろん、ヒットエンドランなどの策を取る“勇気”も出てこないのかもしれない。それでも萎縮していても勝利は遠くなるだけだろう。ここは「超積極的野球」の原点復帰が打開策ではないのか。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 6回裏のチャンスに打てずがっくりして守備に就く阪神大山(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 6回裏のチャンスに打てずがっくりして守備に就く阪神大山(撮影・たえ見朱実)